次世代モバイル通信研究室(株式会社NTTドコモ)

超高速・大容量データ通信を実現する次世代モバイル通信システム

研究を始めるのに必要な知識・能力

ワイヤレス通信/モバイル通信システムに用いられる技術(アンテナ、デジタル変復調、マルチユーザ多元接続等)に関する基礎知識を有していることに加えて、計算機による実験データ処理・シミュレーション等のためのプログラミング能力を有していることが望ましい(プログラミング言語は問いません)。

研究室の指導方針

次世代モバイル通信システムを対象に、ミリ波帯電波伝搬の解明や高度MIMO伝送の性能評価等を通して新技術確立に向けた研究スキルを養うとともに、研究成果を国際会議や研究会等へ積極的に外部発表する活動を通してプレゼンテーション能力、原稿・論文作成能力を養います。さらに、関連する各種実験・トライアル等の実践的な取り組みについても経験出来るようにします。

この研究で身につく能力

高周波技術・ワイヤレス通信技術分野における専門的知識や実験スキルを修得しつつ、最新のモバイル通信システムに対する理解が深められることで、就職後に即戦力となる当該分野における研究開発力、将来のモバイル通信サービス・ビジネスモデルに対する提案力等を身に付けることが可能です。

修了生の活躍の場

電機メーカー、電気通信事業者(携帯電話会社他)をはじめとして、次世代モバイル通信サービスを事業に活用しようと考えている様々な業界(放送、自動車、鉄道、観光など)への就職が想定されます。

研究内容

現在、2020年以降の実現を目指し、全ての「もの」が無線でつながり、多種多様なアプリケーション・サービスをサポート可能な、次世代移動通信システム“5G”の検討が精力的に進められています。5Gにおいては、周波数利用効率の向上、周波数帯の拡張、ネットワークの高密度化をさらに進めますが、その核となる技術のひとつにミリ波(周波数30GHz以上)の利用技術があります。
本研究室では、ミリ波の電波伝搬特性を実環境における測定と計算機シミュレーションより解明するとともに、その結果を基に超高速・大容量データ伝送を実現する高度MIMO伝送技術の性能を評価出来るようにします。

ミリ波伝搬特性の解明とMassive-MIMO技術の評価

Massive-MIMO技術は超多数のアンテナ素子を用いることで超高速・大容量データ伝送を図るものです。この技術はアンテナの設置スペースが大きな課題でしたが、波長の短いミリ波を前提とすることで実用化が現実的なものとなってきました。例えば、同じ面積であれば、周波数を3GHzから30GHzにすることで設置可能なアンテナ素子は100倍になります。一方、距離に対する減衰が大きなミリ波にとっても、アンテナ利得が大幅に向上するMassive-MIMO技術は適していると言えます。このようにMassive-MIMO技術はミリ波と親和性が高いのですが、実際の環境でどれくらいのパフォーマンスが得られるかはミリ波の伝搬する振る舞いに大きく左右されます。ここでは、ミリ波の伝搬特性、特に伝搬経路の空間分布を測定と計算機シミュレーションを駆使して明らかにする研究を行います。また、その結果を基にMassive-MIMO技術のパフォーマンス評価も行います。

ミリ波伝搬シミュレーション技術

2GHz以下の伝搬シミュレーションには一般的に幾何光学近似に基づくレイトレーシング法が用いられます。しかし、ミリ波では物体表面の凹凸に起因する拡散散乱成分が大きくなることから、鏡面反射成分しか考慮できないレイトレーシング法では十分なシミュレーション精度が得られなくなります。一方で、拡散散乱成分を扱えるシミュレーション法であっても、計算に数日かかるようでは現実的ではありません。また、表面凹凸の情報を持つ高精細な構造物データをどのように取得するかも解題です。ここでは、効率的でかつ高精度なミリ波伝搬シミュレーションの手法を研究していきます。

研究業績・共同研究・社会活動・外部資金など

電波伝搬の基本研究に必要な計算機、測定機器(ベクトルチャネルサウンダ※、電界強度計、RF送受信機、各種アンテナ他)および電波暗室(電波無響室)などが利用できます。
※ベクトルチャネルサウンダ:受信局に到来する電波を遅延時間と到来角度で分離受信することのできる測定器で、最先端の伝搬研究をするには必須のアイテムです。本研究室では、2GHz 〜 60GHzまでのベクトルチャネルサウンダを利用することができます。特に、20GHz帯のサウンダは電波を可視化するソフトを有していることから、目に見えない電波がどのような場所から到来してくるのかをリアルタイムで確認することができます。