多言語ナレッジコンピューティング研究室(富士通株式会社)

言語の壁を克服し世界中の知識がつながる

教員

  • 岩倉 友哉

    教授:岩倉 友哉

  • 鄭 育昌

    准教授:鄭 育昌

研究を始めるのに必要な知識・能力

他分野の研究者と交流・連携する積極性が必要になります。また、研究に必要な自然言語処理や機械学習、プログラミングなどの専門知識は、基幹研究室の勉強会に参加するなどして、適宜身に着けていけば問題ありません

研究室の指導方針

本研究室は、企業や社会で起きている課題を解決することを主眼に研究開発を行います。学生に対しては、事業や社会への貢献を常に意識するように指導を行います。学生は富士通で、企業でのAI技術の研究開発を間近に見ることができ、また、様々な研究分野で活躍する様々な研究者に接することができます。これによって、他の研究テーマとの連携についても積極的に行動し、広い視野を持った研究者を育てます。

この研究で身につく能力

自然言語処理の先端技術、特に、世界中の膨大なテキストから知識を構築する技術を学べます。また、企業内研究所に身を置くことにより、社会や事業での様々な課題やニーズから具体的な技術課題を設定する能力が身に付きます。さらに、研究成果が産業・社会に貢献するまでのプロセスを直に体験することで、通常の大学研究室では得られない、技術活用に関する知見が身に付きます。

修了生の活躍の場

情報通信産業等の企業の研究開発部門、大学、研究機関

研究内容

本研究室は、川崎市にある富士通株式会社の教育連携研究室です。富士通では、長年にわたって培ってきたAI技術を活用し、また、技術領域を組み合わせて、デジタルイノベーションによってビジネスの変革と持続可能な社会を実現するために必要な技術の研究開発を行っています。(図1)。本研究室では、特に自然言語処理技術を駆使し、多言語テキストデータから知識の構造化とその活用を実現する技術の研究開発を行っています。

図1:富士通のKey Technologiesの世界

図1:富士通のKey Technologiesの世界

自然言語処理による知識構築

知識構築のための要素技術として、固有表現抽出、関係抽出、同一性判定など、情報抽出技術を研究しております。知識構築の例の一つは、医療分野や化学分野の化学物質ナレッジグラフの構築があげられます。新材料や新薬の開発、材料を用いた製品開発には化学物質に関する知識が必要不可欠で、論文や特許で日々報告される化学物質間の相互関係や化学物質の物性値といった情報を構造化し蓄積することが行われています。しかしながら、2015 年の時点で 2 分 30 秒に 1 件のペースで新たな物質が CAS (Chemical Abstracts Service) に追加されているという報告が示すように、刻々と増え続ける化学物質に対して、専門的な知識を必要とし、現状人手に大きく頼る作業である化学物質の知識構造化作業が課題となっています。
この問題に対し、新規の化学物質の情報の多くは様々な言語で書かれた特許や論文のテキストで報告されることから、多言語自然言語処理技術による自動構築が求められています。
化学物質の知識構築技術は、従来から言語処理分野で研究されてきた情報抽出技術に関連が深いものの、一つの化学物質名が複数の表記を持つ、化学物質が刻々と発見され続けられているなどの特徴から、従来の情報抽出とは異なる課題への取り組みやアプローチが必要になることもあります。そこで、化合物の持つ特徴を考慮した化学分野の情報抽出技術について、研究を行っております。

知識を利用するAIアプリケーション

化学や医療などの領域への自然言語処理技術適用研究も進められています。 一例としては、化学分野において、材料開発時にアイデア発掘のために行っている、特許などの化学文書検索技術を開発しております。また、医師の診断支援による医療水準の均てん化や診療業務の効率化を目指し、電子カルテシステムに入力された診療データから即時に疾病を予測し、治療方針の候補などを医師に提案する診療支援AI技術の開発を行っています。