生体分子情報学研究室(国立研究開発法人産業技術総合研究所)

バイオインフォマティクスで生命科学の謎を解き明かす

教員

  • 富井 健太郎

    教授:富井 健太郎

  • 川田 健太郎

    准教授:川田 健太郎

研究を始めるのに必要な知識・能力

生物学か計算機かどちらかが好きであることが必要です。いくら取り組んでも苦にならないと思えることです。研究を始めるには大学教養程度の生物学の知識は必要ですが、新しい学術知識・計算機技術を研究と並行して常に勉強していきます。そのため、大学院という場で研究に挑戦しようとする強い決意によって、自分の能力を引き出していただきます。研究室内外の仲間や先輩、先生方と議論しながら自分の研究スタイルを確立してゆきます。

研究室の指導方針

1つのテーマを持って研究に取り組む事を通じて、様々な問題解決を体験しながら配属した研究所での研究活動に参加します。技術職として将来発生する新しい問題を解決できる力をつけていただきます。与えられた状況下で、専門知識を元に物事の本質をつかみ、様々な問題解決に取り組む人材育成を目指します。

この研究で身につく能力

ゲノムデータベース、タンパク質の分子メカニズム、分子動力学による分子機能の解析、生体内制御ネットワークの解析、プログラミング技術、システムエンジニアリングの方法論等の技術的な知識の習得が可能です。
研究開発やプレゼンテーションだけでなく、新しい科学技術に携わる企画や営業における様々な問題解決に立ち向かうことのできる技術職としての総合的な力をつけていきます。

修了生の活躍の場

各種製造業の研究開発、システムズエンジニア、ソフトウェア開発、営業職、大学および研究所職員、など様々です。

研究内容

タンパク質など生体分子の機能とそのメカニズムを探るための、バイオインフォマティクスの手法開発を進めています。大規模計算機を活用した網羅的な探索、さらに実験的データにある情報の欠損を補う解析法の開発など、情報工学的な手法で生命科学における知識発見を目指します。

実験的に機能が解析された分子の立体構造から仕組みを理解するために、分子力場によるシミュレーションが必要です。標的分子の機能を探るため、各種分子生物学的データベースにある関連情報を活用します。情報科学によって実験データにある情報をより深く捕らえる手法を研究します。

図1:オミックス解析によるドラッグリポジショニングの例

図1:オミックス解析によるドラッグリポジショニングの例

図2:タンパク質-タンパク質のドッキング予測計算の例

図2:タンパク質-タンパク質のドッキング予測計算の例

図3:物理演算エンジンを利用したタンパク質複合体アニメーションソフト ウェアの開発手法(2013 年度修論)物理演算エンジンを利用したタンパク質複合体アニメーションソフトウェアの開発手法(2013 年度修論)グラフィカルなユーザインターフェイスで分子間相互作用をリアルタイムに検証するソフトウェアを開発した。

図3:物理演算エンジンを利用したタンパク質複合体アニメーションソフト ウェアの開発手法(2013 年度修論)物理演算エンジンを利用したタンパク質複合体アニメーションソフトウェアの開発手法(2013 年度修論)グラフィカルなユーザインターフェイスで分子間相互作用をリアルタイムに検証するソフトウェアを開発した。

図4:分子アニメーションのための基準振動解析に基づいた動的呼格モデルの開発(2014年度修論)骨格アニメーション(リギング)で分子の揺らぎを表示する手法を提案した。

図4:分子アニメーションのための基準振動解析に基づいた動的呼格モデルの開発(2014年度修論)骨格アニメーション(リギング)で分子の揺らぎを表示する手法を提案した。

システム数理情報統合基盤の開発

大規模計測データからオミックス関連データを抽出し、分子プロファイリング技術により標的薬剤候補の探索やドラッグリポジショニングに繋がる研究を試みます。またデータをより効率的に利用するため、データと解析要素技術を柔軟に組み合わせ可能とするワークフロー解析基盤の構築に取り組み、セマンティック技術を用いた知識発見を進めています。

タンパク質複合体の相互作用シミュレーション

タンパク質同士または核酸や低分子との複合体における分子認識メカニズムを探るため、複合体の分子動力学および量子化学計算から相互作用を解析します。 PDB立体構造データベースに見られる相互作用を網羅的に探索した相互作用の統計をもとに、標的分子とのドッキング予測を試みます。

低温電子顕微鏡画像に基づく立体構造解析

タンパク質などの低温電子顕微鏡画像を利用した正確な立体構造モデリングを行うためのデータ解析技術の開発とその応用を行います。

オミクスデータ解析に基づく生体内制御ネットワーク解析

遺伝子発現やタンパク質量などの大規模解析データを利用して、生体内制御ネットワークの法則性を明らかにするためのデータ解析技術の開発とその応用を行います。
特に情報科学を利用して、細胞分化などの状態変化に応じたネットワークの変化が、どのように細胞状態を決定するかの理解を深める研究を進めています。

生体分子の構造・機能推定

蓄積の進む生体分子情報に関するデータを利用したタンパク質などの未知立体構造や機能の推定を行うための技術の開発とその応用を行います。

研究環境

本研究室は、平成12年より継続する国立研究開発法人産業技術総合研究所・生命情報科学研究センターとの連携活動を中心に展開してきました。東京大学や早稲田大学の連携研究室も併設され、国内外のバイオインフォマティクス、AI、計測実験などの幅広い分野をカバーした研究者によるセミナーなど、センター内外の研究者との交流の場面があります。

研究設備

  • 産業技術総合研究所内の大規模計算機
  • 力覚フィードバック6自由度入力装置(Geomagic社製)