サイバネティクス・リアリティ工学研究室 酒井ちひろさん(博士前期課程1年)が、第75回エンタテインメントコンピューティング研究発表会において研究奨励賞(金賞)を受賞しました。(2025/3/19)

 本研究発表会は、一般社団法人情報処理学会(IPSJ)のエンタテインメントコンピューティング研究会(SIGEC)が主催するもので、「新しいエンタテインメントを創造するための技術研究」や「面白さの評価・解明」、「教育・福祉・運動などへの応用研究」を目的とし、エンタテインメントコンピューティング分野の発展を牽引する研究成果の発表と議論の場となっています。第75回エンタテインメントコンピューティング研究発表会(SIGEC2025)は、2025年3月17日から19日にかけて京都大学にて開催されました。
 酒井さんが発表した研究「視線可視化と視覚的探索支援を実現する肢体不自由者向けロボットシステムの開発」は、視線によって操作可能なロボットを用いて、重度の肢体不自由者が周囲の状況を把握し、視線の可視化を通じて意思や関心を他者に伝えることを可能にするものであり、その独創性と社会的意義が高く評価されました。今回の受賞を契機に、今後さらなる研究の進展と実社会への応用が期待されます。  
  • 受賞者/著者 Awardees/Authors:
      酒井ちひろ(博士修士課程1年)、吉藤オリィ(株式会社オリィ研究所)
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    写真は、酒井ちひろさん

  • 受賞研究テーマ Research theme:
    "視線可視化と視覚的探索支援を実現する肢体不自由者向けロボットシステムの開発"
     現在日本には、肢体不自由により日常生活に支障をきたしている人々が多数存在します。肢体不自由の影響により視野範囲が限定されていたり、発話が困難であったりする場合があります。これらが原因で、移動の最中に自身に迫る危険に気づくことが難しかったり、他者に対して物の操作や移動を依頼する意図の伝達手段が制限されることで、生活の利便性が著しく低下したりする課題が生じています。
     これらの課題を解決するため、本研究ではユーザである肢体不自由者の注目対象の可視化と視覚的探索を支援することを目的としたロボットシステムを開発しました。指向性ライトとカメラを搭載したパン・チルト動作が可能なロボットであり、PCのグラフィカルユーザインタフェースで簡単に操作できます。指向性ライトにより注目対象の可視化を実現し、介助者などユーザの周囲の人々に対してユーザの注目対象を知らせる擬似的な「指差し」が可能です。また、ロボットのパン・チルト動作によりユーザが見たい場所を見ることを可能にしています。
     萎縮性側索硬化症の患者2名に試用を依頼した結果、ロボットの実用性を実感してもらい、いくつかの改善点についてのフィードバックを得ることができました。

  • 受賞者のコメント Awardee's voice
     今回はこのような賞を賜り、大変光栄に存じます。ユーザビリティ評価に参加していただいた方々、オリィ研究所の皆様、開発スキル伝授やイベント参加など様々な経験をさせてくださった吉藤オリィ様、そしてインターンシップへの参加を後押し下さったサイバネティクス・リアリティ工学研究室の先生方に深く感謝申し上げます。今後はこのシステムに関する研究開発をオリィ研究所との共同研究として継続し、より多くの皆様にお使いいただけるよう、発展させていきたいと思います。

  • 外部リンク Links to:
     情報処理学会エンタテインメントコンピューティング研究会 HP: https://sig.entcomp.org/

>> サイバネティクス・リアリティ工学研究室 Cybernetics and Reality Engineering lab