自然言語処理学研究室の東山 翔平客員助教、大南 英理さん(博士前期課程1年)、五藤 巧さん(博士後期課程1年)、西田 悠人さん(博士前期課程2年)、出口 祥之さん(博士後期課程3年)らが、言語処理学会第30回年次大会(NLP2024)において表彰されました。(2024/3/14)

 言語処理学会年次大会は、日本の言語処理研究の成果発表の場として年1回開催されている大会です。第30回年次大会は、2024年3月11~15日の期間で開催されました。
委員特別賞:全投稿論文599件から最優秀賞・優秀賞・若手奨励賞受賞論文を除いた対象論文567件のうち、26件に委員特別賞が授与されました。
若手奨励賞:年次大会の開催年の4月1日において満30歳未満のもの」を対象とし、主に当該研究論文と第1著者の将来性を評価し、第1著者(人)に対して贈られる賞で、対象論文427件のうち、18件に若手奨励賞が授与されました。
PKSHA Technology賞、Money Forward賞、SmartESG賞は、大会の発表論文に対して、スポンサーが独自に授与する賞で、これらの3つの賞を含め、本大会では14のスポンサー賞が授与されました。 
*学年・所属は受賞当時
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第30回年次大会 委員特別賞

  • 受賞者/著者 Awardees/Authors:
     東山 翔平(客員助教/情報通信研究機構)、大内 啓樹、寺西 裕紀、大友 寛之(サイバーエージェント)、井手 佑翼、山本 和太郎、進藤 裕之、渡辺 太郎
  • 受賞研究テーマ Research theme:
    "日本語旅行記ジオパージングデータセットATD-MCL"
     ジオパージングは、文章中に含まれる実世界の場所に関わる情報を解析する基盤技術です。本研究では、文書レベルのジオパージングシステムの開発・評価に向けた第一歩として、日本語旅行記データセットを構築・公開し、現在のシステムの評価を行いました。
  • 受賞者のコメント Awardee's voice
     本研究を評価していただき、大変嬉しく思います。賞の選考に関わっていただいた皆様、これまで本研究にコメントいただいた皆様に感謝申し上げます。本研究が、「ことばと地理空間の情報処理」に関する今後の研究の発展の一助となれば幸いです。

若手奨励賞/PKSHA Technology賞/Money Forward賞:

  • 受賞者 Awardee:
     若手奨励賞:大南 英理(M1)  
     スポンサー賞:大南 英理、栗田 修平(理研)、宮西 大樹(ATR)、渡辺 太郎
  • 受賞研究テーマ Research theme:
    "JDocQA: 図表を含む日本語文書質問応答データセットによる大規模言語モデルチューニング"
     本研究では図表を含む日本語文書をもとにして、視覚情報とテキスト情報の両方を参照する質問応答データセットJDocQAを提案し、複数の日本語大規模言語モデルや画像を入力とするモデルを使用して、データセットのベンチマーキングを行った。その結果、JDocQAを用いて大規模言語モデルのチューニングを行うことで、図表を含む日本語文書の質問応答課題の性能を向上することができた。また、文書中の情報から解答できない質問を学習することにより、モデルのハルシネーション抑制に有効であることを確認した。
  • 著者 Authors:
     大南 英理、栗田 修平(理研)、宮西 大樹(ATR)、渡辺 太郎
  • 受賞者のコメント Awardee's voice
     このたびは栄誉ある賞をいただくことができ大変光栄です。ご指導いただいた共著者の皆様に感謝申し上げます。 今後もよりよい研究ができるよう精進いたします。

若手奨励賞

  • 受賞者 Awardees:
    五藤 巧(D1)
  • 受賞研究テーマ Research theme:
    "文法誤り訂正における参照なし評価尺度を用いた分析的評価法"
     自然言語処理の一つの分野に、テキストの文法的な誤りを自動的に訂正することを目指す文法誤り訂正タスクがあります。このタスクにおいて、人間の正解文を用いなくてもシステムの訂正文の質を議論可能な参照なし評価が注目されています。しかし、参照なし評価には文単位の評価値は分かっても訂正単位の評価値は分からず、詳細な分析ができないという問題があります。本研究ではこの問題解決の第一歩としてシャープレイ値という考え方を応用し、文単位の評価値を分配することで訂正単位の評価値を計算する方法を提案しました。
  • 著者 Authors:
     五藤 巧、渡辺 太郎
  • 受賞者のコメント Awardee's voice
      このような賞をいただけて大変嬉しく思います。今後とも良い研究ができるように精進します。

若手奨励賞

  • 受賞者 Awardees:
     西田 悠人(M2)
  • 受賞研究テーマ Research theme:
    "kNN言語モデルは低頻度語の予測に役立つか?"
     検索拡張言語モデルは、外部のデータストアから検索された近傍事例を活用することで言語らしさを高精度に予測可能である。本研究では、検索拡張言語モデルの1つであるkNN言語モデルがどのような語に対して高い予測精度を有するのかについて分析を行った。従来、kNN言語モデルは外部のデータストアを利用することによって低頻度語の予測性能が改善するという仮説が提唱されてきたが、本研究の分析により、これまでの仮説に反して、kNN言語モデルは低頻度語の予測性能の改善に寄与しないことを明らかにした。
  • 著者 Authors:
     西田悠人 (NAIST)、森下睦 (NTT)、出口祥之、上垣外英剛、渡辺太郎 (NAIST)
  • 受賞者のコメント Awardee's voice
     この度は栄誉ある賞をいただき大変光栄に思います。賞審査に尽力してくださった方々、大会運営委員の方々に厚く御礼申し上げます。また、多大なご指導を賜りました共著者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。今後とも精進してまいります。

SmartESG(シェルパ・アンド・カンパニー)賞(スポンサー賞)

  • 受賞者/著者 Awardees/Authors:
     出口 祥之 (D3), 坂井 優介 (D2), 上垣外 英剛, 渡辺 太郎
  • 受賞研究テーマ Research theme:
    "疑似参照訳文ベクトルの重心に基づく高速なニューラル最小ベイズリスク復号 "
    頑健で高品質な翻訳が得られる訳文生成法の最小ベイズリスク(MBR)復号は、一般的な最大事後確率復号と比較して、翻訳速度が著しく低下するという問題が知られている。本研究では、MBR復号速度を改善するため、類似した翻訳文を高次元空間で予め集約する近似法を提案する。複数の翻訳実験より、提案法は、翻訳速度のみならず、設定によっては翻訳品質まで改善することを示した。
  • 受賞者のコメント Awardee's voice
     このたびはSmartESG賞に選出いただき大変光栄に思います。今後も本研究のさらなる発展を目指したいと思います。

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