INTERVIEW

創発的先端人材育成フェローシップ採択者

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  • 計算システムズ生物学研究室

    横山 慎太朗

    Yokoyama Shintaro

  • 未病の予防・改善を目的とした中医体質学と行動変容の理論に基づいたスマートフォンアプリケーションの開発

未病 中医体質 スマートフォンアプリ

中医体質学+行動科学で真に効果のある健康法を提案

世の中には多種多様な健康法がありますが、人はそれぞれ異なる体質とライフスタイルを持っており、どの方法が自分に合っているのか、何をどの程度やればいいのかは、一人ひとり違います。しかし、それを適切に判断するための知識は普及していません。  

そこで、中医体質学の理論に基づいて自身の体質を明らかにし、健康維持に効果的なプログラムが簡便にわかるスマートフォンアプリの開発に着手しました。

実は、私は学部時代に心理学、修士課程ではスポーツ科学を専攻していました。大勢の人々の健康で幸せな生活のために役立つものを作りたいという思いから、情報科学分野に飛び込んだのです。

スマホアプリであれば誰でも低コストで、どこでもサービスを受けることができる。情報科学の勉強を一から始めることになったが、ひとつずつクリアしていった

中医体質学に着目したのは、人間の体質を簡易的に9種類に分類し、それぞれ健康維持に必要な事柄──たとえば運動、食事、メンタルケアなどについて、網羅的に明示しているからです。さらに行動科学の理論に基づいて、ユーザが健康プログラムを継続して実行できる仕組みを作り、提案する。それらを情報科学の技術でスマートフォン用のアプリケーションとして実現することが、本研究の目的です。

中医体質学が示す9種類の体質と、現在の生活環境やライフスタイル等の要素も含めて、本人に最適な健康プログラムを提案する。科学的なバックグラウンドを持つアプリはまだ少ない

「未病」の普及も重要な要素のひとつ

病気を発症した患者に対して治療を施す。それが現代の医療です。そのため軽い自覚症状があったとしても、検査で異常が発見されなければ放置される傾向にあります。この病気になる一歩手前の状態を「未病」といいます。  

未病の概念が一般社会に浸透すれば、現在よりも早期に生活習慣の見直しや心身のケアを開始し、健康状態を維持できるようになるでしょう。それが医療費の高騰や非感染症疾患の蔓延など、社会的課題の解決にも繋がると期待できます。

また、アプリには提案したプログラムを実行したか否かをユーザ自身がチェックしたり、体質の変化を定期的に再確認する機能なども組み込む予定です。これにより、自分で自分の健康管理をしっかりと行い、それでも病気になってしまったときは治療後の再発防止や、主治医が長期的に患者さんの体質変化を把握するうえで役に立てれば、と思っています。

アプリがある程度形になれば、被験者に3カ月から半年ほど本システムを使用してもらい、結果を検証してブラッシュアップしていく

健康で幸せな暮らしを創出するチームの一員として

子どもの頃から祖父母をはじめ高齢者と触れ合う機会が多く、ひとたび病気になると短期間で心身ともに衰弱してしまう様を目の当たりにしてきました。そのため、すべての人に生涯いきいきと過ごしてほしい、健康であってほしいと願う気持ちが、私の研究の原点です。支援金や研究費をいただいたことで、社会に貢献できる成果を出したい、健康分野にイノベーションを起こしたいという気持ちがより強くなりました。  

本学のキーワードのひとつに「共創」があります。ディズニーランドではお客様に夢を与えているように、私たちも各分野で優れた研究成果を出し、多くの人々に喜んでもらえるよう、みんなで盛り上げながら頑張っていけたら、と思っています。

支給される研究専念支援金や研究費は、もとは国の税金。社会に対する責任を自覚し、ニーズに応えられるよう専門性を高めていきたい

(取材・撮影:ライティング株式会社 酒井若菜)