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コンピューティング・アーキテクチャー研究室
赤部 知也
Tomoya Akabe
高性能計算のための低遅延CGRAの開発
CGRA 低消費電力 高性能計算 -
情報化社会のエネルギー消費量を抑えるために
現代社会はIT化が進む一方で、エネルギーの大量消費による環境問題が深刻になっています。私たちは日々、ビジネスでもプライベートでも膨大な量の情報をやりとりしており、今後もそれらは右肩上がりで増加すると予測されています。
情報通信機器の研究開発は、これまでは半導体の微細化によって処理速度の向上と消費電力の軽減を実現していました。しかし半導体微細化の限界により、高性能化および省エネルギー化は、もはや頭打ちになっています。
これからは、新しい計算基盤を生み出す必要があります。そこで私はCGRAを対象に、高速計算によって低消費電力を実現する、新しいコンピュータアーキテクチャの開発に取り組みました。大容量データの転送はCGRAに届くまでの通信路がボトルネックになってしまいますが、2台のCGRAを協調させれば、2つの通信路で効率よく処理できると考えています。
新たなアーキテクチャの構築と周辺技術の開発
修士課程では計算精度を下げることで消費電力を抑える手法を追求していましたが、今回はメモリや配線等に手を入れて、システム全体での低消費電力・高性能化を目指しています。
しかし、動作テストや評価を行う際、新しいアーキテクチャには既存のシミュレーターやコンパイラをそのまま使用できないため、自分で作成する必要がありました。様々な知識と技術を駆使し、探りながら一つひとつオリジナルのものを作っていくことは、正直大変でした。それでもこのCGRAが完成すれば、計算コストが高い医療シミュレーションや自動運転なども、高速化および低消費電力化が実現できると期待しています。
ただし、新しい計算基盤を開発しても、それが社会で活用されなければ意味がありません。導入の難易度を下げたり、一般の人々に認知してもらえるように科学コミュニケーション力も磨いていかなければ、と思っています。
自分の研究テーマがより鮮明になった
やるべきことは山積していますが、このフェローシップに採択されたことで生活費や研究費について悩む時間がなくなり、感謝しています。
応募する際は研究計画書を作成する必要がありますが、それも貴重な経験になるはずです。私は研究室の仲間や教授にアドバイスをもらうことで、頭の中が整理されて、自分が進むべき道筋がはっきりしました。その計画書が認められることは望外の喜びであり、身が引き締まりました。
コンピュータアーキテクチャの研究はニーズが高いにもかかわらず、国内の研究者は少数です。今後の進路は決めていませんが、この分野の成長に貢献できる研究者になりたいと思っています。
(取材・撮影:ライティング株式会社 酒井若菜)