ゼミナール講演

日時平成10年 12月17日(木)4限(15:10 -- 16:40)
場所L1
講演者田中 譲
所属 北海道大学工学研究科 教授
講演題目 「ミームメディアとミームマーケットのアーキテクチャ」
概要
今日、学術・技術分野はますます多様化し、細かく分化するとともに、 学際的研究もますます多くなってきている。学術・技術の高度化に伴って、 多様かつ高度な研究成果が、再利用・再編可能な活性化された形態で、 学際的かつ国際的に速やかに流通・交換されることが益々重要になってき ている。 科学技術ならびに人文科学における知識には、文書情報の他に、画像、映像、 音声などのマルチメディア情報、実験・調査データとそのグラフ表現などの プレゼンテーション、分析・解析や観測・制御のためのハードウェアとソフ トウェア、現象や事跡やノウハウに関する知見を記述したファクト集やルー ル集、それらに基づいて人類が創造する人工物とそのデザイン、さらにはこ れらの知識やその保持者へのアクセス法に関する情報やノウハウなどがある。 ハードウェアを除けば、これらはいずれも今日のコンピュータ上でデータや プログラムやルール記述などのソフトウェアとして取り扱うことが可能であ る。ハードウェアも、そのデザインは同様にコンピュータ上で取り扱われて いる。これらの多様な知識は、個々には今日のコンピュータ上で既に取り扱 われているのであるが、これらを自在に組み合わせ、連携させて利用するこ とと、再利用が可能な形態で知識を国際流通させることは、未だに不可能で ある。 例えば、ゲノム情報の研究者は、膨大なデータを持ち、種々の分析アルゴリズ ムを研究し、多様な分析ソフトウェアを開発している。研究者が相互にこれら の知識を自在に交換し再利用するためには、各種分析ソフトウェアと各種データ ベースとの連携動作、異なる分析ソフトウェア間の連携動作、既存分析ソフトウ ェアの一部機能の抽出と再利用などが、自在に簡便に定義でき実行できることが 必須である。現状では、これらは不可能であるか、可能であってもデータ・コン バージョンやソフトウェアの書換えを必要とし、極めて困難である。 このような問題意識から、平成7年度から平成9年度にかけての3年間に渡って、 文部省科学研究費特別推進研究(2)の交付を受けて「知識の構築・編集・再利用 のための知識メディアと国際流通・管理検索基盤の研究開発」を行った。この研 究では、(1)科学技術ならびに人文科学におけるあらゆる知識を再利用、再編 可能な形式で公刊することができる統合情報メディア技術を確立すると共に、 (2)知識の国際的流通・交換を可能にする国際流通基盤システム・アーキテク チャを確立し、(3)これら技術を公開し、社会が共有する知識の進化の加速に 関して実証的に研究することを目標として掲げ、これらをほぼ達成した。 本講演では、知識メディアに関して講演者がこの12年間に渡って行った研究の 成果の概要を紹介する。

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平成10年度ゼミナール担当:武田 英明、吉川 正俊、関 浩之