ゼミナール講演

日時平成10年 6月 3日(水)4限(15:10 -- 16:40)
場所L1

講演者 久米 出
所属 知能情報処理学講座 助手
講演題目 Alias Problem in Object-Oriented Database Integration
概要
オブジェクト指向データベースを統合する際のデータ管理を行うプログラムコー ドの再利用の問題を考える。互いに無関係に開発されたコードがデータベース オブジェクトを共有することにより意味的に誤ったデータ管理をする例を取り 上げる。こうしたケースは発見が難しく、症状が表に出ないことが多い。本研 究ではメタデータを用いたこうしたデータ共有問題の解決を考察する。

講演者 黒田 知宏
所属 像情報処理学講座 助手
講演題目 手話工学の現状とこれから
概要
近年バリアフリー社会の構築が各方面で叫ばれ、制度面ではバリアフリー建築基準の 制定や介護福祉士養成事業など、情報工学からも電子化点字書物の国際標準の制定、 ホームページ読み上げソフトに対応したWEB書式(W3C)の制定など、様々な取り組みが 進められている。 ところが、聴覚障害は一見してその障害が明らかでないため、軽度の障害であると認 識され、制度面でも研究面でも取り組みが遅れてきているのが現状である。 「聴覚言語障害はコミュニケーション障害である」と言われるように、健聴者の用い る音声言語を基本とした情報にアクセスできないことがろう者の最大の問題である。 そこで、聴覚障害者の母国語である手話を言語学的側面から解析し、これをもとに工 学的手法を用いてろう者の直面する様々な問題の解決策を提示する研究分野を「手話 工学」と定義し、様々な分野の研究者によって精力的に研究が進められている。 手話工学の究極の目標は手話と音声言語の自動翻訳であるが、手話は音声言語とは全 く異なる文法体系を持つ独立した言語であるうえ、手話の言語的解析が未だ充分に進 んでいないため、従来の自然言語翻訳技術だけでは対応しきれない。また、手話は視 覚メディアを用いて交換され、記述言語を持たないため、これを計算機内で適切に取 り扱い、適切に提示する手法の検討も必要である。 本講演では、これらの問題に対して手話工学ではどの様に取り組んでいるのかを、現 状の研究成果を交えて解説する。

講演者 田中猛彦
所属 計算機言語学講座 助手
講演題目 時間の概念を含む暗号プロトコルの安全性検証法
概要
安全でないネットワーク上で安全な秘密通信や認証を実現するため, これまでさまざまな暗号プロトコルが提案されている. しかしその安全性は,しばしば設計者の直観や経験に依存していた. 近年,形式的手法を用いて,暗号プロトコルの安全性を厳密に検証する というアプローチが盛んになっている. 形式的検証は,まず与えられた暗号プロトコルの仕様を何らかの計算モデルに 基づいて形式的に記述し,次にその記述が安全性に対応する性質を満たすか 否かを判定する,という手順で行われる.この方法により, 暗号プロトコルの理論的な安全性を保証することや,安全でない 暗号プロトコルについてその欠陥を検出することが可能となる. 考案されまた実用化されている暗号プロトコルではしばしば, タイムスタンプを用いて情報の新しさを判定しているが, 従来の検証法では,時間の経過やタイムスタンプといった 時間の概念を適切に表現するのが困難であった. 本発表で述べる検証法では,計算モデルとして条件付き項書換え系を 使用し,情報と時間の関係を特別な形の項で表現することで, 時間の概念を自然に記述することが可能となった. 同検証法を用いて,BAN 論理と呼ばれる論理モデルに基づく検証法により 安全であると判定されていた暗号プロトコルが,安全でないことを 示している.

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平成10年度ゼミナール担当:武田 英明、吉川 正俊、関 浩之