ゼミナール講演

日時平成12年 6月 7日(水)4限(15:10 -- 16:40)
場所L1

講演者 中西 正樹
所属 言語設計学講座 助手
講演題目 量子計算モデルと従来の計算モデルの能力の比較
概要
量子力学に基づく計算機である量子計算機を用いると,整数の因数分解が桁数 の多項式時間で行えること等が知られており,近年注目を集めている.量子計 算機のモデルとして,チューリング機械を拡張した量子チューリング機械,有 限オートマトンを拡張した量子有限オートマトン,ブランチングプログラムを 拡張した量子ブランチングプログラム等が提案されており,量子計算モデルが 従来の計算モデルよりも能力が高い可能性が指摘されている.本講演では,量 子計算モデルについて解説をした後,従来の計算モデルと比べてどのような能 力の違いがあるかについて述べる.

講演者 波多野 賢治
所属 マルチメディア統合システム講座 助手
講演題目 構造化文書の情報検索手法
概要
情報ネットワークの発達により,我々は多くの情報を発信・受信することが 容易になった.これら多くの情報の中から利用者が必要な情報を抽出する情 報検索の手法は,今日ではなくてはならないものとなっている.しかし,現 在の Web 上の検索システムで使用されている文書検索の方法は,単に文書を 文字列として扱っているだけで,文書の持つ文書構造を反映した手法は数少 ない.しかし,Web の将来性や構造化文書の今後の重要性を考慮すると,文 書内外に存在する構造,例えば HTML のリンク構造や構造化文書の持つ木構 造を考慮した検索手法が必要となってくる. そこで,本講演では,Web 文書間に張られているリンクの構造や,構造化文 書の持つ文書自身の構造を利用した情報検索手法について,講演者が行って きた研究を紹介する.また,構造化文書の木構造を利用した検索者のアクセ ス制御についても触れ,一つの構造化文書をアクセス権に応じて様々な形で 閲覧させることができる機構の実現法についても紹介する.

講演者 佐藤 淳
所属 システム基礎講座 助手
講演題目 数値最適化手法を活用した制御システム設計
概要
近年の計算機パワーの増大と数値計算アルゴリズムの進歩により数値最適化手法の制 御理論への応用が盛んに行われている.中でも制御問題をLMI(線形行列不等式) ベースの数値最適化問題に帰着させ解析,設計を行うアプローチは,多くの典型的な 制御問題がLMIベースで記述可能であることから有効性が広く認められている.計算 機の支援を前提とするこのようなアプローチは,従来の解析的手法では困難であった 問題や,多目的制御に有効であることが知られており,実用的観点からも重要であ る.

本講演では航空機のフライトコントロールシステムの設計を例としてLMIベースの制 御系設計の有効性を紹介する.フライトコントロールシステムでは,コントローラが 航空機に接続された状態において1)航空機の運動モードが実用上適切なものであるこ と(固有構造配置),2)設計モデルと実際の航空機の特性に差があっても安定性を失 わないこと(位相,ゲイン変動に対するロバスト安定性)が要求される.従来手法で 困難であったこのような設計もLMIベースのアプローチにより容易に取り扱い可能で ある.


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平成12年度ゼミナール担当:笠原 正治, 河野 恭之, 小笠原 司