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コンピューティングアーキテクチャ研究室の高前田伸也助教の博士論文が 「情報処理学会 研究会推薦博士論文」に選ばれました。(2014/05/29)


  • 氏名: 高前田(山崎) 伸也
    学位論文題目: Multi-FPGA based Prototyping Framework for Emerging Manycores
  • 概要
    プロセッサは性能・電力効率の更なる向上のために, 単一のチップ上に複数のコアを集積するマルチコア,および 更に大量のコアを集積するメニーコアのアプローチへ移行している. そして,メニーコアの時代における新たなアーキテクチャを採用した プロセッサの評価を高速に行うためのシミュレーション環境として, FPGAを用いたプロトタイピングが有望である. 本研究では,FPGAプロトタイピングにおける課題である, シミュレーション対象プロセッサが搭載するコア数の増加に対して, スケーラブルなシミュレーション速度の達成と, 対象プロセッサとFPGAシステムが持つ細粒度の ハードウェアリソース量や種別の乖離に起因する, システム開発の複雑性の低減を実現する, 新しいプロトタイピングフレームワークを提案した.
    まず,スケーラブルなシミュレーション速度の実現のために, クロックサイクルレベルで正確なシミュレーションを高速に行う, 多数のFPGAを用いたシミュレーションシステムの構築方式, ScalableCoreシステムを提案した. これまでのFPGAベースのプロセッサシミュレータでは, 対象のコア数が増加するに従って, シミュレーション速度が低下するという問題点が存在する. これに対して,予め拡張可能なFPGAアレーアーキテクチャを提案し, その上に対象のメニーコアプロセッサを分割実装することで, 対象のコア数が増加しても,速度が低下することなく, 高速なシミュレーションを可能にした.
    次に,システム開発の複雑性を低減するための方式として, シミュレーション対象が必要とするハードウェアリソースと, FPGAが持つリソースの間の乖離を吸収する, 抽象化を用いたプロトタイピング方式のflipSyrupを提案した. 提案方式では,FPGAが持つメモリシステムとFPGA間通信という 2種類のリソースを,1サイクルでアクセス可能な理想的な インターフェースとして抽象化し,シミュレータ設計者に提供する. これにより,理想的なハードウェアリソースを想定して, 迅速にプロセッサのモデリングができるようになった. また,抽象化を用いて設計されたプロセッサのRTLデザインを, 実際のFPGA上に実装可能なデザインに変換する, RTL解析・変換ツールチェインを開発した.
    最後に,これら2つの提案方式を合わせたフレームワークを構築し, それを用いてプロセッサのシミュレーション環境を開発した. その結果,自動合成されたシステムは,手実装でチューニングされた システムと同等の,高いシミュレーション速度を達成することを確認した.
    まとめると,本研究では,スケーラブルなシミュレーション速度と 高い開発効率を両立するプロトタイピングフレームワークを提案し, 実際のFPGAシステム・ツールチェインの開発を通じてその有用性を明らかにした.

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  • 著者からの一言
    指導教員の吉瀬先生はもちろん,計算機アーキテクチャ研究会をはじめとする, 学会でお会いした皆様には、大変お世話になりました. 私に刺激ときっかけをくれる,素敵な人たちに恵まれたおかげで,こうして博士 号を取得できました. これからは,世界の計算機アーキテクチャの発展に貢献すべく,楽しく研究に励 んでいきます.

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