以上の背景から,本研究では,文書集合に対する情報探索タスクに既存の対話 管理技術を近似的に組み込む方法を論じる.これまでの対話管理研究では, 「情報要求の適格性のチェック」「文脈に基づく情報要求の補完」「検索結果 に基づく情報要求の修正」,といった機能の実現方法が論じられてきた.そこ で本研究では,情報要求履歴の継承と制約緩和を組み合わせることによってこ れらの3つの機能を近似的に実現する方法を試みた.
実装については,奈良先端大情報科学研究科の「受付案内ロボットASKA(アス カ)」で想定されているドメインを取り上げ,プロトタイプシステムを開発し た. 例文50対話をシミュレートし,評価を行った.その結果,9割が的確な回答を 出すことができた.また,「文脈に基づく断片的発話の理解」「状況に適応的 な対話主導権の交替」などに対処できるようになった.