文書集合に対する情報探索のための対話履歴管理

山下 亜希子(0151115)


電子化文書による情報流通が加速する今日,大量の電子化文書から情報を獲得 する技術として,自然言語による情報抽出である質問応答技術に関心が集まっ ている.質問応答に関する従来の研究は一問一答式のタスクに重点を置いてき た.しかしながら,実際のユーザの要求はそれほど単純でなく,対話的に情報 要求を満足させる対話型情報探索の実現が求められている.情報探索対話に関 する研究は,これまでのところ,構造化データベースを対象とするタスクに偏っ ており,構造化されていない文書集合に対する対話管理技術についてはまだ萌 芽的段階にある.

以上の背景から,本研究では,文書集合に対する情報探索タスクに既存の対話 管理技術を近似的に組み込む方法を論じる.これまでの対話管理研究では, 「情報要求の適格性のチェック」「文脈に基づく情報要求の補完」「検索結果 に基づく情報要求の修正」,といった機能の実現方法が論じられてきた.そこ で本研究では,情報要求履歴の継承と制約緩和を組み合わせることによってこ れらの3つの機能を近似的に実現する方法を試みた.

実装については,奈良先端大情報科学研究科の「受付案内ロボットASKA(アス カ)」で想定されているドメインを取り上げ,プロトタイプシステムを開発し た. 例文50対話をシミュレートし,評価を行った.その結果,9割が的確な回答を 出すことができた.また,「文脈に基づく断片的発話の理解」「状況に適応的 な対話主導権の交替」などに対処できるようになった.