以上を踏まえ本研究では,位置情報のみから大域的に人工衛星の角速度を推定する非線形オブザーバを提案する.本手法では,人工衛星の運動方程式を回転行列$R$ではなく四元数による方法で表現する.それは,4個の変数で姿勢を表現するため,冗長度は1ですみ,3軸を等価に扱っており,運動方程式が簡単であること.さらに,運動方程式自体には,特異点が現れないこと.このような理由から四元数を用いた姿勢表現を採用することにする.また,同次なシステムにおいては必ず同次リアプノフ関数が存在し,リアプノフ関数の設計が容易であるという特性があるため1軸でのオブザーバを設計する際に同次性の概念を用いる.この1軸のオブザーバを参考に3軸の角速度オブザーバを設計する.この際,角速度の偏差をとるのではなく,運動量の偏差をとることによって慣性モーメントの主慣性モーメントが全て違う形でも偏差系のダイナミクスを構成でき,リアプノフ関数を用いることによって角速度オブザーバの大域的安定性が保証されることを示す.