エレメント合成法を用いたOFDMダイバーシチ受信機の
回路規模削減に関する研究

青山 直樹 (0151001)


移動体通信においては,送信された電波が複数の伝搬経路を通ることによって起こる マルチパスフェージングが問題となっている. マルチパスフェージングは,主に遅延波による問題と振幅変動による問題の二つが 挙げられるが,前者はOFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が, また後者はダイバーシチがそれぞれ有効であり,マルチパスフェージングに対する 耐性を有する受信機として,OFDMにダイバーシチを適用した OFDMダイバーシチ受信機がある.

しかし,移動受信端末は小型化や小電力化が要求されるのに対し,OFDMダイバーシチ 受信機はアンテナ素子毎にRF (Radio Frequency)部,A/D (Analog-to-Digital) 変換部,及びDFT (Discrete Fourier Transformation)部があり, 回路規模が増大するという問題点がある. よってOFDMダイバーシチ受信機を小型の移動受信端末として用いるには 回路規模を削減することが重要である.

これまでにも,OFDMダイバーシチ受信機の回路規模削減に関する研究が 進められてきた. この研究により,従来のOFDMダイバーシチ受信機はDFTの後で合成するDFT後合成 ダイバーシチに対し,DFTの前で合成することができるDFT前合成ダイバーシチが 提案された. この方式により,DFT部を1個に削減できたことで回路規模は大幅に削減されたが, RF部やA/D変換部はアンテナ素子毎にある.

本論文では,更にRF部やA/D変換部も1個に削減して回路規模を大幅に削減し, しかもダイバーシチ効果を得られるOFDMダイバーシチ受信機を提案する. 提案方式では,受信機は1本の主アンテナにのみに接続し,副アンテナでは アンテナ素子を終端する可変容量リアクタンスを制御することで, アンテナ素子間の放射結合を用いてRFのままダイバーシチ合成を行うことができる. リアクタンス制御は二分探索法と切替法の二つを提案した. 続いて,計算機シミュレーションによりパラメータに対する解析を行った. その結果,提案方式でダイバーシチ効果を得られ,最もビット誤り率特性の良い DFT後合成と比較して,前者では3dBの劣化,また後者では4dBの 劣化で抑えられていることが分かった.