可変構造シミュレーションシステムの機能拡張
田中 一成(9851065)
LSI技術の進歩の結果,従来ソフトウェアで行なわれていた処理を,FPGAなどのプログラマブルデバイスを用いてハードウェアレベルで実現することが可能となってきている.
我々の研究室は,その応用の一つとして,シミュレータのハードウェア化の一手法を提案するとともに,提案手法を実現する可変構造シミュレーションシステムの構築を行なっている.
本システムでは,シミュレーションモデルとして,待ち行列を用いたシミュレーションを対象としている.
シミュレーションは,種々のパラメータを少しずつ変えて何度も実行するため,
多大なシミュレーション時間を要するので,シミュレータのハードウェア化は,計算時間短縮の点で非常に有益である.本システムの特徴は,解析モデルを記述する工程で
GUI(Graphical User Interface)ツールを用いている点である.
GUIツールを用いることにより,ユーザは直感的にシミュレーションモデルを簡易に記述できる.しかし,旧バージョンの可変構造シミュレーションシステムでは直列型と無条件分岐のツリー型構造など非常に単純なシミュレーションモデルにのみ対応していた. そこで本論文では可変構造シミュレーションシステムをより複雑なシミュレーションモデルに対応できるよう,システムの各部分の設計を見直し機能拡張を行った.主なシステムの変更点は,複数のキュー・サーバをシミュレーションのパラメータに従って選択する回路を新たに追加した点と,この機能の追加に必要とされる各種情報を保持するための回路を,キューとサーバの回路構成を変更して追加した点である.この機能拡張により,速度面における有用性はあったが,実用的にシミュレーションを実行できるほど機能面で充実しておらず,複雑な解析モデルへ対応出来ていなかった旧システムを,
待ち行列モデルにおいて頻繁に用いられている,複数のキュー・サーバ間の選択に対応した条件分岐をハードウェア化できるようにした.