2007.11.26-11.29 タイ・プーケット
The 3rd Asian Internet Engineering Conference (AINTEC 2007)
インターネット工学講座:博士後期課程2年
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【発表内容】

インターネット広域においてネットワーク特性の提供サービスとして機能する、アプリケーション指向のネットワーク計測基盤が注目されている。本論文では、アプリケーション指向のネットワーク計測基盤上で行われる計測活動の流れに注目し、このような基盤の基本構成要素である計測ネットワークの構成手法を提案する。提案手法では、計測ノードの役割をcoreとstubの2つに分け、ノード間で2層式のpeer-to-peerネットワークを形成する。これにより、提案手法で構築される計測基盤が、従来の方式に比べてより安定した基盤の運用と粒度の細かい負荷分散制御を実現できることを、計測処理の流れを可視化することなどで示した。

【会議の内容】
Fehmi Ben Abdesslemらによる "A Prototyping Environment for Wireless Multihop Networks" という研究発表が興味深かった。現在の無線技術研究は方式提案が多数なされる一方で、それらの実装がほとんど存在しないことが背景としてあげられる。それをふまえ、無線技術の数学的解析やシミュレーションの後、実装の手前のプロセスに位置づけられるプロトタイピングを高速・簡便に実現し、無線技術の研究開発を加速することを目的とするPrawnと呼ばれるシステムを提案した研究である。Prawnは、neighbor discoveryなどの単位機能を実現するライブラリと、それらを定められたタイミングや条件で実行していくエンジンで構成される。ライブラリはCやPerl、Javaで記述することができ、言語のカバー率が高いことが特徴である。論文中にはnetwork codingなどの近年注目されつつあるマルチホップ無線伝送方式をPrawnで簡単に実現している事例も示されていて、プロトタイピングツールとしての高い機能性が確認できる。ソフトウェア自体も公開されており、無線技術分野の実運用を目指した開発の過程において非常に重要な位置づけとなりうるシステムであると感じた。同時に、彼らと同じくソフトウェアの開発を伴う研究を行っている自分にとっても、システム設計やリリース方法について参考になる面が多くあった。

【研究技術交流等】

提案方式で構成されるシステムについて、実際のネットワーク環境で展開する場合に発生する特有の問題などについて、議論を行った。また、計測手法の研究者との議論では、計測基盤に求められる機能についての洗い出しを行い、今後の研究・開発の参考となった。