2008.12.15-17 台湾・台北
The 14th Pacific Rim International Symposium on Dependable Computing (PRDC'08)
コンピューティング・アーキテクチャ講座:博士前期課程2年
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【発表内容】
A Functional Unit with Small Variety of Highly Reliable Cells というタイトルでポスターを発表、また2ページのShort Paperを投稿した。

【会議の内容】
題名: Conjoined Pipeline: Enhancing Hardware Reliability and Performance through Organized Pipeline Redundancy
著者: Viswanathan Subramanian and Arun K. Somani
内容紹介:
近年のハードウェアでは製造プロセスの微細化により故障が従来より生じやすい状況になっている。 本発表ではハードウェアの耐故障性を高め、かつハードウェアのパフォーマンスを高める為の 新しい冗長性について提案した。 彼らはパイプラインレジスタとパイプラインステージを2重化した。 複製されたパイプラインステージでは複製元のパイプラインレジスタから値を受け取り、 複製されたパイプラインレジスタに書き込むという処理を行う。 その際、複製された各レジスタとステージに異なるクロックを与えることで故障からの復旧する のに必要なサイクル数を減少させる。 コメント 冗長性はハードウェアの耐故障性を高めるのには良く使われる手法であるが、 入力と出力とで異なった処理を行い、かつ異なったクロックを与えるという方法は おもしろそうだと感じた。 今はまだ評価項目が少ないのでこれからの評価結果に注目したい。
題名: Finding the Optimal Configuration of a Cascading TMR System
著者: Masashi Hamamatsu, Tatsuhiro Tsuchiya, Tohru Kikuno
内容紹介:
冗長性の中で定番であるTMR(モジュールを3重化し、後ろに多数決回路を設置する)回路を 改良し、多数決回路の出力を次のTMRの各モジュールに繋げるのではなく、 多数決回路の前の各モジュールの出力自体を次のTMRの各モジュールに接続する。 このように接続方法を変えることでシステム全体の信頼性を高める. コメント TMRは冗長性の中では定番中の定番であり、すでに枯れた技術と思われていたが まだまだ発想次第で信頼性を高めることが出来るのだなと関心した。

【研究技術交流等】

ポスターセッションは30分と時間が短く、また場所が悪かったのか あまり多くの人に来てもらえなかった。 それでも来てくださった数人の方と、またポスター発表者同士で いろいろ交流を交わした。

 

2009.4.20-25 台湾・台北
IEEE International Conference on Acoustics,
Speech, and Signal Processing (ICASSP 2009)

音情報処理学講座:博士後期課程3年
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【発表内容】

筆頭著者発表: 2 件
共著として発表: 3 件

以下では,筆頭著者としての発表2件と
代理で発表を行った1件について内容を紹介する.

(1)
Authors: Yu Takahashi, Yoshihisa Uemura, Hiroshi Saruwatari,
Kiyohiro Shikano, and Kazunobu Kondo
Title: Musical noise analysis based on higher order statistics
for microphone array and nonlinear signal processing
Presentation style: Poster
Abstract:
今回は,非線形雑音抑圧処理に伴って発生する非線形歪みであるミュージカルノイズを減算する仕組みを,高次統計量によって解析を行った結果を発表した.
近年,より良い雑音抑圧性能を達成するため,マイクロホンアレー信号処理と非線形雑音処理を組み合わせた手法が研究されている.この手法は確かに,高い雑音抑圧性能を達成することが可能であるが,非線形処理に伴う人工的な歪みが生じる.この歪みはミュージカルのイズと呼ばれ,非常に不快な歪みである.本発表では,このミュージカルノイズを低減するためのマイクロホンアレー信号処
理と非線形処理雑音抑圧処理の新たな組み合わせ構造を提案し,さらに高次統計量に基づく解析,シミュレーション,及び主観評価実験により,提案構造が確かにミュージカルノイズを低減できる事を確認した.

(2)
Note: 私が筆頭著者であるが,他の自分の発表と時間が重なっていたため代理発表者を依頼

Authors: Yu Takahashi, Hiroshi Saruwatari, Yuki Fujihara, Kentaro Tachibana,
Yoshimitsu Mori, Shigeki Miyabe, Kiyohiro Shikano, and Akira Tanaka
Title: Source adaptive blind signal extraction using closed-form ICA for
hands-free robot spoken dialogue system
Presentation style: Oral
Abstract:
我々は,独立成分分析(ICA) を雑音推定に用いるブラインド空間的サブトラクションアレー(BSSA)によるリアルタイム雑音抑圧処理を提案し,この BSSA を用いてハンズフリー音声対話ロボットを構築している.本発表では,BSSA に用いられている ICA の収束性をさらに向上させるため,解析型2次統計量 ICA を初期値生成に用いるあらたな BSSA アルゴリズムを提案し,BSSA の収束性の向上を確認している.この新たなアルゴリズムによりユーザがロボットに話しかけた直後から高い雑音性能を達成することが可能となった.

(3)
卒業生の代理として発表
Authors: Yoshihisa Uemura, Yu Takahashi, Hiroshi Saruwatari,
Kiyohiro Shikano, and Kazunobu Kondo
Title: Musical noise generation analysis for noise reduction methods
based on spectral subtraction and MMSE STSA estimation
Presentation style: Poster
Abstract:
我々は,高次統計量に基づくミュージカルノイズの発生量の指標を提案しているが,この指標を用いて,代表的な非線形雑音抑圧処理であるスペクトル減算法と,MMSE-STSAの解析を行い,その結果得られた新しい知見を報告した. 非線形雑音抑圧処理に伴って発生する非線形歪みであるミュージカルノイズは,今まで主観的な評価でのみ発生量が評価されて来たが,我々は高次統計量に基づいてミュージカルノイズの発生量を客観的に評価できる事を発見し,ミュージカルノイズの発生量尺度を提案している.この尺度に基づき代表的な非線形雑音抑圧手法である,スペクトル減算及び,MMSE-STSAを解析し,経験的に知られていた事実の析的な裏付けを得るとともに,今まで知られていなかった MMSE-STSA は音声区間でミュージカルノイズを発生しやすいという事実を明かにした.



【会議の内容】

ICASSP は世界で最も規模の大きい信号処理の国際会議であり,音声・音響処理だけでなく,画像,無線通信,機械学習など,信号処理に関わるおおよそ全ての分野の発表が行われている.以下,いくつか興味深い文献を挙げる.

(1)
Title: An objective measure for the musical noise assessment in noise
reduction systems
Authors: Nima Derakhshan, Mohsen Rahmani, Ahmad Akbari, Ahmad Ayatollahi
(Iran University of Science and Technology, Iran)
Abstract:
この発表では,音響信号処理において問題となるミュージカルノイズの発生量を客観的に取り扱うための尺度を提案している.この尺度では時間周波数領域における音響信号の特徴に基づいて「ミュージカルノイズ度」を算出し,それに基づいて尺度を導出する.この尺度の特徴的なところは,人間の聴覚構造を(ある程度)考慮し,可聴なミュージカルノイズ成分のみを尺度に反映させていることにある.主観評価実験の結果,この尺度は人間が感じるミュージカルノイズの量と高い相関があることが示された.

Comment:
ミュージカルのイズは非線形雑音抑圧処理にともなって,ほぼ確実に生じる人工的な歪みであり,非常に問題となっているにも関わらず,ミュージカルノイズを客観的に評価しようとしているグループは世界的にも稀であり,非常に新鮮であった.我々もミュージカルノイズの尺度を提案しているが,違うアプローチであり,また人間の聴覚構造を考慮している点が新しい.また長時間にわたって,我々の尺度と,彼らの提案している尺度違いや,良い点をマージするとどうなるかなどかなり踏み込んだ議論を行った.

2.
Title: Multimodal blind source separation for moving sources.
Authors:Syed Naqvi, Yonggang Zhang, Jonathon Chambers,
(Loughborough University, UK)
Abstract:
この発表では,近年盛んに行われている独立成分分析 (ICA)によるブラインド音源分離と,画像処理の技術を統合して,静止している音源だけでなく移動する音源に対しても頑健に音源分離を行う手法を提案している.一般に,移動している音源に対して音源分離を行うためには分離フィルタを逐次適応してやる必要があるが,リアルタイムかつ高速にに高精度な適応を行うことは難しい.この発表では,静止している音源に対しては画像情報から得られた音源方位情報を基に高精度な初期値を生成し,ICAを動かすことにより高速にICAを収束させて高精度な分離結果を得る.また,移動している音源に対しては,画像情報により得られた音源方位情報から適応ビームフォーマにより音源を分離する.この手法により,静止音源と移動音源の両方に対して頑健に音源分離を行うことができる.

Comment:
静止音源と移動音源の両方に対して頑健に動作する音源分離アルゴリズムは少なく,また,画像情報と ICA,ビームフォーミング技術を巧妙に組み合わせており,リアルタイム化も望めるということで非常に興味深い.ただ,まだ実験については一般的な部屋に比べると残響時間が短い実験室でのシミュレーションのみということで,今後は実環境下における実験が必要だということであった.


【研究技術交流等】

この会議は非常に幅広い分野の信号処理をターゲットにしているため,様々な分野の研究者と話す機会があった.特に,機械学習に基づく音声処理をしているグループの方と議論する機会に恵まれた事が有益であった.自分のポスター発表では,30〜40 人ほどの方と説明,議論を行い,多くの人に自分の研究について興味を持ってもらえた.特に統計信号処理に精通している方とは踏み込んだ議論を行うことができ,有益なコメントを頂くなど,収穫が多かった.

 

2009.4.18-24 台湾・台北
IEEE International Conference on Acoustics,
Speech, and Signal Processing (ICASSP 2009)

音情報処理学講座:博士後期課程3年
Report19_4
【発表内容】

体表から信号を採取する肉伝導音声を通常音声に変換する肉伝導音声変換において,様々な環境で得られた肉伝導音声に頑健に対応するための音響特性補正法を提案し,評価結果を発表した.
実験的評価から,CMSに基づく補正法によって変換性能が大きく改善されることを発表した.
また,より多くの適応データが得られる時は,CSMAPLRに基づく補正法によって,さらに変換性能が改善されることを発表した.

【会議の内容】

本会議は,IEEE Signal Processing Society が毎年開催する, 世界で最も大きな「信号処理とその応用」に関する国際会議である.印象を受けた発表として,音声の主要な特徴量である音韻特徴量と音源特徴量を,多空間上の確率分布によって同時にモデル化する試みが提案されていた.音声合成は世界的にも非常に注目されている分野であり,まだまだ解決すべき課題も多い.このような提案によって,より音声合成分野の発展が期待される.

【研究技術交流等】

本会議では,各セッションの間にコーヒーブレイクが振舞われ,他の研究者と交流する機会があった. この機会に,国内の音声合成研究者だけではなく,他国他分野の研究者と交流することができ,非常に貴重な経験をすることができた.