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ユビキタスコンピューティングシステム研究室
真弓 大輝WEBサイト
Daiki Mayumi
糖分摂取量低減を補助する
嗅覚インターフェースの開発
嗅覚デバイス 飲料行動認識 説得工学 味覚拡張 -
情報技術を活用し、健康的な食事行動に寄与する
匂いの感じ方には個人差があり、定量的な評価が困難であるため、これまでHCIの分野では嗅覚に介入する研究があまり行われていませんでした。
しかし私たちは食事をする際、70〜95%は匂いの影響を受けていると言われています。それならば意図的に匂いを与えることで食事の感じ方をコントロールし、糖分摂取量の制限の問題に嗅覚からアプローチできるのではないかと考え、本研究に着手しました。
匂いを感じる鼻腔経路は「鼻先香」と「口中香」の2つがあります。前者は鼻から入った匂い、後者は口に入ったものの香りが喉の奥から鼻に抜けたときに感じる匂いです。
まず鼻先香に焦点をあててデバイスを開発したところ、香りによって飲料の甘さを増幅させることはできましたが、味の満足度は向上しませんでした。そこで、口中香に香りを提示するよう改良し、現在のプロトタイプを構築しました。
口中香を実現し、飲料の味覚を変化させる「Kaolid」
プロトタイプではストローの中間部分から香りを含んだ空気を注入する、また蓋と飲料の間の空間に香りを注入することで、口内に飲料と香りを届ける口中香を実現しました。
どちらもユーザーが手にとった瞬間にセンサが感知し、飲む動作に応じて香りを噴射、飲み終えて机の上に置くと噴射が止まります。また、1日の水分や糖分の摂取量を自動で判定し、ユーザーにリアルタイムで伝えるサブ機能も搭載予定です。
甘い香りは柑橘系をはじめ約10グループあると言われており、飲み物との組み合わせによって味の感じ方が異なります。柑橘系の香りと水・炭酸飲料は相性が良く、実験でも甘さが増幅し、味の満足度も向上する結果が得られました。さらに実験と検証を重ねて、飲み物の味の拡張が実証された後は、本デバイスの長期間使用による糖分摂取量の変化を評価していく予定です。
グローバルに活躍し、日本のIT領域を発展させる研究者を目指して
このフェローシップによって金銭的に余裕が生まれ、研究に専念できる時間が増えました。また、備品の購入や関連分野学会への参加、留学も実現しました。特に海外では日本人と外国人の味覚の違いや、文化的背景の影響などについて学ぶことができ、見識が広まったと感じています。博士後期課程の学生にとって、自身の研究をより深く広く追求できる素晴らしい制度です。
この貴重な期間でさらなる成果を出し、博士課程修了後には企業の研究職に就いて、人々の「食事」をIT技術で拡張し、生活を豊かにできるものを生み出していきたいと思っています。
(取材・撮影:ライティング株式会社 酒井若菜)