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インタラクティブメディア設計学研究室
秋吉 拓斗WEBサイト
Takuto Akiyoshi
身体接触を伴うカウンセリング対話ロボットの実現と評価
HRI(ヒューマンロボットインタラクション) 身体接触 カウンセリング -
悩みを聞き、寄り添ってくれるロボットをつくりたい
ロボットは社会のさまざまな場面ですでに活用されていますが、私はその役割の一つとして、人の悩みを聞いたり、励ましたり、気づきを促すロボットの実現を目指しています。
きっかけは学部3年生のとき、「人の悩みを聞くカウンセリングロボットの研究開発」のアルバイトに参加したことです。認知行動療法について学び、頷きながら話を聞いてくれるロボットを開発したところ、被験者が「聞いてもらって心が軽くなった」と、言ってくれました。
私自身にも、深く悩んでいたときに多くの人に話を聞いてもらい、立ち直った経験があります。ロボットでも同様の気づきや解決へ促す可能性があると知り、私が生涯かけて目指すべき研究テーマが決まったのです。
ロボットと患者が直接触れ合い、信頼関係を深める
しかし、医療現場で初めて実験を行ったとき、「こわい」「ロボットなんかと話したくない」と、対話のみでは十分な信頼関係を築けないケースに直面しました。
そこで、言葉以外で安心感を与える方法について医師と話し合い、ロボットが患者と直接接触する“触れ合い”にたどり着きました。センサで心拍数や体温、身体の緊張具合などの生体情報を取得し、患者の心身状態を把握した上でロボットが軽く叩いたり撫でたりしながら適切な対話を展開する。これが実現すれば、より安心して対話できるシステムになると考えました。
自律対話の基本的な流れはすでに完成し、現在は患者や医師からいただいた意見を反映させ、ブラッシュアップしているところです。また、対話に合わせて軽く叩く動作や撫でる動作を実行する接触動作モデルの構築や、カウンセリングロボットがもたらす効果の評価方法なども検討を重ねています。
本システムの効果が証明されて活用が広がれば、病院はもちろん、学校の保健センターといった精神科の専門家がいない場所にも導入され、年齢や場所に関係なくメンタルケアを受ける機会が増えると期待できます。
人とロボットが互いに思いやり共生する社会を目指して
このフェローシップはアイデアと努力を評価し、それらを推進するための十分な支援を提供してくれます。以前は生活費について悩む時間が多かったのですが、今はその懸念が払拭され、目の前の研究課題に一つずつ、責任感を持って集中して取り組めるようになりました。
「心を持つロボット」の実現が可能かどうかは、まだわかりません。しかし「自分を気遣ってくれている」「一緒に喜んだり悩んだりしてくれている」と、人間がロボットの言葉や動作に“心”を見出せるロボットをつくることは可能であると考えています。
これから申請する人たちも挑戦を恐れず、自分の研究を信じて共に前進していきましょう。
(取材・撮影:ライティング株式会社 酒井若菜)