EUI: 意味的身体拡張インタラクションの概念の提案と指識別バーチャルハンドによる実現

井上 陽平


ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)における進化は,物理世界の古典的な道具や電子機器操作のパラダイムや人の自然な動作を活用することが中心であった.しかし,その多くが関心の対象に対しては,間接操作やモーダルな直接操作である.あるいは,モードレスな直接操作のために人の記憶や動作に頼り,それには限界がある.そのため物理世界のパラダイムだけではモードレスな直接操作は限定的であり,学習容易性と効率の両立に限界がある. 本研究では,人の身体に意味を割り当て操作を実現する新しいインタラクション・デザインの概念を提案する.人の身体を意味的に拡張し,インタフェースを意識させず透明性の高いインタラクションを実現する目的から,エンハンスト・ユーザ・インタラクション(EUI: Enhanced-User Interaction)と呼ぶ.また,その概念の手法の一つとしてバーチャルハンドによる指識別タッチインタラクション(VSTouch: Virtual Semantic Touch)を提案する. VSTouchは,デスク上の手をRGB-Dカメラでセンシングし,指識別タッチインタラクションを画面上の手の輪郭(バーチャルハンド)で実現する. VSTouchの基本的特性を評価するため3種類の対象・コマンド選択タスクと2次元ポインティングタスクにより評価実験を行った.合計45種の対象・コマンド選択タスクの結果は,コマンドあたり10回目の選択において参加者平均697msとなり,高い学習容易性と効率を示した.2次元ポインティングタスクの結果は,スループット3.5bpsとなりバーチャルハンドによる間接指示タッチインタラクションの実用可能性を示した.