会話における文脈を考慮した皮肉検出

山田 暉 (1811403)


皮肉検出とは,発話に皮肉表現が含まれるか、含まれないかを分類する二値クラス分類のタスクの一つである. 近年,会話における話者の感情を検出することで,対話型エージェントでの話者の感情に即した応答生成や, チャットボットにおける話者の感情理解などの様々な応用タスクへ適用することへの期待が高まっている. しかし発話の中に皮肉表現が含まれると正確な感情検出は難しくなることが感情検出を研究していく中で明らかになった. そのため感情検出を向上させるためには皮肉検出の向上も図る必要があると考え,本研究では皮肉検出に集中した. 皮肉検出は近年ワークショップが開かれるなど注目される研究の一つとなりつつある. 発表では感情検出に触れながらも主に皮肉検出に焦点を置いて述べる. なお今回の発表の中では,会話の中で話者が発する文や文章のことを発話と呼ぶ.

本研究では会話の皮肉検出において文脈情報が重要であることを示すため, BERTと呼ばれるディープニューラルネットワークの手法を用いて検証した. BERTを用いたのは以下の3つの利点があるためである.
1. 文脈情報を容易に入れることができる
2. 可視化により定性的な評価が可能
3. ドメイン適用が容易

またBERTの中に含まれるAttentionと呼ばれる可視化のできる手法によって, 実際に皮肉表現を基に分類されているか検証を行う. 結果として,従来手法よりも皮肉検出の精度が向上し,定性的な説明可能性を示唆した. 今回の発表では先行研究での実験結果との比較と,可視化によって文脈の有用性が顕著に現れたことを中心に述べる.

今回は従来の手法を使用することで,比較実験や可視化などの分析に重点をおいた.今後の課題として自身の構築したモデルの実験を行うことでさらなる精度向上につとめたいと考える. また今回は,感情検出において問題点を感じ,皮肉検出に集中して実験を行った.皮肉検出の成果は感情検出の研究にも応用できると考えられるため,その応用方法の思案も今後の課題とする.