光学シースルーHMDのための仮想物体の\\半透明感を低減する提示手法

渡邉大生 


光学シースルーHMD(以下OST-HMDと呼ぶ)はビデオシースルーHMD(以下VST-HMDと呼ぶ)とくらべ,その構造が単純軽量であることや周囲の光をHMDで再現する必要がなく,仮想物体を除いた領域の応答遅延がないため,周囲の環境が激しく変化する作業現場などへの応用に適していることが利点である.その一方でOST-HMDは仮想物体を提示する際に,ユーザ周囲由来の光とHMD由来の光が混合してしまうため,周囲の光の分布によっては仮想物体が認識しづらくなるという問題がある.この解決法として,仮想物体の映像から,その背景の映像を差し引いた差分映像を出力することが考えられる.しかし,周囲の光が目標とする仮想物体より明るい場合,負の強度をもつ光を出力することが求められるため現在通常のOST-HMDでは提示ができない.そこでこれまでOcclusion Capable Head Mounted Displayとして仮想物体領域の背景光を遮断するための新たなハードウェアを追加したOST-HMDが多く提案されてきた.ただし,このようなOST-HMDが実用化されるまでには光学系の複雑さから,比較的長い時間がかかると考えられる.そこで本研究では従来型のOST-HMDを用いてソフトウェアの改良のみによって,仮想物体のオフセット成分を除いて周囲由来の光を低減させる方法を提案・実装し,その評価を行った.