ハンドスケーリングにおける歯科衛生士の技術定量化とその評価

由井 朋子 (1811298)


歯科衛生士とは,口腔の健康維持と治療の診療補助を行う医療職の1つである. 日本において歯科衛生士の職に就くためには,通常3年制以上の養成学校に通い,歯科衛生士の業務に関する技術と知識を学ぶ必要がある.

養成学校において歯科衛生士を志す学生が受ける技術教育には,口腔内での細やかな器具操作がある. これには知識教育と同様に教本はあるが,器具の操作感覚などの詳しい操作説明はない. 歯科衛生士教員は視覚教材を活用し,自身でデモンストレーションを行うなどして工夫を凝らして指導をしているが,歯科衛生士教員のスキルに依存する指導となっている. また,歯科衛生士学生は自学自習を通して技術の習得に励むが,自身の器具操作が正解なのか分からないないまま非効率な練習をしている現状もある. 練習に使う模型は何らかの操作をしてもフィードバックはなく,歯科衛生士教員が立ち会っての練習ができれば良いが様々な業務もあり難しい.

この自学自習を効率の良いものにするためには,歯科衛生士学生自身に今の動作が正しいのか,誤っているのかをリアルタイムで提示できるシステムが有効である. よって,歯科衛生士学生の動作に対してフィードバックのあるシミュレータのようなシステムの開発に繋げるため,本研究ではセンサを使用した動作計測とその評価を行なった.

今回の対象技術は,歯科衛生士の重要な業務の1つであるハンドスケーリングとした. 提案する動作計測システムは,下顎右側第一大臼歯1本に6軸力センサを取り付けハンドスケーラーと呼ばれる器具の先端が歯の表面に及ぼす力を計測, ハンドスケーラーの把持部分に取り付けたIMUにてハンドスケーラーの動きを加速度と角速度で計測するものである. 実験では,被験者を歯科衛生士教員と歯科衛生士,歯科衛生士学生とし,実際のハンドスケーリング動作を計測,定量的に評価した. 本発表では,提案システムにより微細な手指動作が定量的に評価可能であること,計測値を活用して学生への助言に使用した場合の効果を検討したことなどを説明する.