Abstract Meaning Representation (AMR)は, 自然言語文の意味をノードとエッジによる有向非巡回グラフで表現した意味表現形式である. AMRコーパスの構築に伴い, 文をAMRに変換するAMR parsingの研究が進められている. これまでに様々なAMR parserが提案されてきたが, 総じて論理的多義の意味のように動的な意味生成を必要とする言語現象に対応できない. そこでこの問題に取り組むために, 生成語彙論の枠組みに基づいたAMR parserを提案する. 生成語彙論は動的で構成的な理論であり, 新たに意味が生成されるしくみを「生成的な演算」によって説明するものである.
本発表では生成語彙論に基づいたAMR parserを提案するにあたり, 次の2点に分けて説明する. (1) 解析目標となるAMRの表現方法の提案 既存のAMRコーパスには意味の動的な生成を必要とする論理的多義の表現が含まれていない. そのため, 論理的多義の意味を表現するのに妥当なAMRを用意する必要がある. (2) 解析アルゴリズムの提案 先行研究の一つであるCAMRの遷移型アルゴリズムを拡張し, 演算を適用すべき不整合な表現の検出と文中には明示されないノードの生成を行う. これにより「タイプ強制」と「共構成」という2つの生成的な演算を実現する. paragraph delimiter
実装したAMR parserの性能を確認するため, 作成した評価データのGoldと解析結果の類似度をSmatchスコアにより計算した. その結果, 生成的な演算のうちタイプ強制は0.77, 共構成は0.68というスコアを獲得し, 提案手法によって論理的多義の解析が概ね実現できることが示されたが課題も残った.