CT画像を用いた下顎骨および咀嚼筋の自動セグメンテーションおよび統計解析

森谷 友香


顎口腔機能異常の画像検査では,機能異常により変形した筋骨格の位置や形状を確認することに加え,異常の生じる以前の咬合や歯列の状態を予測することが必要とされる. また,現在の臨床現場ではいくつかの治療指標はある一方で定量的な指標が少なく,新たな定量的指標を検討することが求められている. そのため,患者個別の筋骨格モデルの構築を行うことが臨床的に有用であると考えられる. 筋骨格モデルの構築に関して,下顎骨や咬筋のセグメンテーションや,下顎骨上のランドマーク検出の研究が現在進められている. しかし,歯科充填物等の金属物質の影響によりCT画像上に重度の金属アーチファクトが生じると,筋骨格セグメンテーション精度は下がるという課題がある. 金属アーチファクト低減の手法は既に提案されてきたが,金属領域を正確に識別できない場合,性能が著しく低下してしまう. 本研究では,患者個別の筋骨格モデル構築およびそれを用いた統計解析を目的とし,金属アーチファクトを含むCT画像における筋骨格自動セグメンテーションおよびランドマーク自動検出の手法を提案する. 従来の金属アーチファクト低減手法における金属領域の識別処理を改良した提案手法とランドマーク自動検出を前処理として用い,筋骨格セグメンテーションを行った. 大規模CT画像データベース(742症例)においてランドマーク間距離と筋骨格の体積の計測ができ,性別により有意差のある検証結果を得た.