隠れマルコフ過程によるマルコフ過程の補間
森 純平 (1811268)
マルコフ性とは確率論における確率過程の一種であり,
その確率過程の将来の状態の条件付き確率分布が現在の状態のみに依存し,
過去のいかなる状態にも依存しない性質である.マルコフ過程に斉次性を仮定した場合,
マルコフ過程のτステッ プ分の推移を与える遷移確率行列は 1 ステップ分の遷移確率行列のτ乗として与えられる.
さらには,マルコフ過程の定める単位期間より短い期間の状態の遷移を 1 ステッ プの分の遷移確率行列から計算し,
活用する試みも行われている.例えば,金融工学における格付けの遷移行列が推定される最短の時間間隔は通常 1 年である.
1 年より短い期間内の遷移観測の数は、信頼できる遷移行列を推定するには少なすぎると考えられるためである.
しかし,評価目的によっては,1 年よりも短い期間の遷移確率行列が必要になる場合がある.
このような課題に対してマルコフ過程の補間を試みる研究がなされてきたが,
補間するマルコフ過程の遷移確率行列の固有値の分布によっては適切に補間できない場合が存在する.
本研究では隠れマルコフ過程を用いて,
どのようなマルコフ過程に対しても適切に補間が行うことが可能な方法を提案する.
また隠れマルコフ過程の導入により調整パラメータの数が大きくなるという問題を回避するため,
少数の非零要素により記述されるマルコフ過程の導出に取り組む.具体的には補間問題を遷移確率行列の分解問題として定式化する.
この分解問題は非線形性が強く,一般に解を求めることは難しい.そのため,本研究ではこの分解問題を最小化問題に置き換え,
Particle Swarm Optimization,確率的勾配降下法と確率的勾配降下法にアニーリングを援用した方法を用いて適切に遷移確率行列を求める.
さらに,これらの手法の数値例を比較し提案法の有効性を検証する.