ドップラーセンサを使用した認識対象の行動速度の違いによる宅内行動認識手法

三﨑慎也(1811256)


近年,センシング技術の発展に伴い,省エネ家電制御等の日常生活をサポートする様々なサービスの実現が期待されている.このようなサービスを実現するには,多種多様な生活行動を正確かつ安価に認識できることが重要である.例えば,代表的な生活行動認識として,電力計と位置センサを用いた手法が提案されている.この手法は,10種類の生活行動を平均精度79.4%で推定することに成功している.しかし,センサを様々な場所に設置する必要があり,コストが掛かる(課題1).また,「読書」といった,家電製品を使用せず,場所に関係なく行われる生活行動(=場所非依存行動)を正確に検出・認識することは困難である(課題2).これらの課題を解決するための方法として,各場所非依存行動が取られる際の人体モーションを利用する方法が考えられるが,ウェアラブルデバイスを使用する手法では,被験者に装着負担が生じるといった課題があり(課題3),カメラを使用した手法では,プライバシー侵害が課題となる(課題4).そこで,課題1から課題4を解決するため,先行研究では,電磁波により認識対象の動きを検知可能なセンサであるドップラーセンサを用いた手法が提案されている.この手法は,3つの行動(PC操作,読書,スマートフォン操作)を45.9%の精度で推定できることが示されているが,認識対象の行動が少なく(課題5),認識精度が十分ではない(課題6)といった課題が残されている.

本研究では,課題1から課題6の全てを解決することを目的とし,生活行動ごとの動作速度の違いを取得し,それらを特徴量に加えることで,場所非依存行動を認識できる手法を実現する.提案手法の有効性示すため,被験者10人の異なる6つの行動(スマートフォン操作,PC操作,読書,書き作業,食事,静止)をドップラーセンサによって収集し,行動認識モデルを構築し,1セッション除外の交差検証(leave-one-session-out cross-validation)によって評価した.その結果,Time-windowを15秒,サンプリング周期を4msと設定し,被験者にとって右側,左側,背面に設置したドップラーセンサから得られるセンサデータを組み合わせて用いることで,58.74%まで向上することがわかった.