ロボットを用いた「なでる」と「話す」のマルチモーダルインタラクションによる心地よさの評価

本多 克


「なでる」動作は,ストレスや痛みの軽減,認知症の抑制といった幅広い効果をもたらすことが知られている.このことから,私たちは日常的に「なでる」動作を行なっており,また医療・介護の分野においても,ケアの手法として取り入れられている. この「なでる」動作に,コミュニケーションの観点から重要となる「話す」を組み合わせることで,人に対する「なでる」動作を含むケアにおいて,より心地良さを向上させることができると考える. そこで本研究では,より心地よいケアの実現を目指して,ロボットによる「なでながら話す」というマルチモーダルインタラクションが,人に与える心地よさを向上させるのか評価することを目的とする. まず,人が実際に「なでながら話す」振る舞いを記録・解析することにより,人らしい振る舞いをモデリングし,そのモデルにより,人のように「なでながら話す」ことができるロボットを実現する. そして,そのロボットを用いて(1)「なでる」,(2)「話す」,(3)「なでながら話す」の3種類の動作について,人に与える心地よさを,アンケートとアフェクト・グリッドによる主観的指標,スキンコンダクタンスと筋電位による客観的指標により評価する.その結果,主観的評価・客観的評価ともに(3)「なでながら話す」が(1)「なでる」よりも有意に心地よさと覚醒度を向上させる結果となった.このことから,より心地よいケアを実現する上で,「なでながら話す」というマルチモーダルインタラクションが有効であることが示唆された.