キーワード : 観光計画,意思決定支援,ルート推薦,経路探索,遺伝的アルゴリズム,2-OPT
インターネットを介した多くの口コミ情報の共有サービスや,Google Mapに代表されるオンライン地図サービスの普及などにより,観光客が増加している. これらの観光客の増加の原因として,インターネットを介した口コミ情報の共有サービスや,Google Mapに代表されるオンライン地図サービスの普及などがあげられる. このようなツールを使って観光情報を手軽に入手できるようになったことで,事前に詳細な観光計画をたてて効率よく観光することが可能になった.
しかしながら,インターネット上に存在する観光は情報過多で有るため,観光地の有用な情報だけを選別することは難しく,ユーザにとって負担となる. そこで,ユーザによって指定されたエリア内の観光スポットを自動的に選択し,観光スポット間の移動を含むツアープランを推薦する, 自動ツアープランニングシステム(以下,Automatic Tour Planning System, ATPS)が提案されている.
一般的にATPSでは観光において最短経路や最安値での移動を提案するが,ユーザは満足度や経験を得ることを主目的とするため,常にこれらの経路が最適解であるとは限らない. また,観光で満足度を得るためには金銭,時間,体力といったユーザの持つ資源を消費する必要があり,最適化にはこれらの要素のトレードオフを考慮することが不可欠である. つまり,ATPSは複数の独立した要因間のトレードオフを抱える多目的最適化問題に置き換えることができる. 本研究の目的は,この多目的最適化問題を解くことで,ユーザにトレードオフを加味した複数の観光経路を提示し,意思決定支援を行うことである.
この問題は巡回セールスマン問題の拡張であるため,現実的な時間で解を得るにはヒューリスティックな手法を用いて解を探索する必要がある. そこで我々は,この問題を解くアルゴリズムとして,GAと2-OPTを用いたヒューリスティックアルゴリズムを提案した. GAは大域探索を行い局所解へ収束しないように働き,2-OPTは局地探索を行い,各解の精度を向上させることを目的とする. アルゴリズムを決定するために,2-OPTの実行タイミングを決定する実験を行い,初期解とGAの算出した解に2-OPTを適用させるアルゴリズムを提案した.
提案アルゴリズムの有効性を評価するために,京都市東山区周辺の29ヵ所の観光スポットを対象にした観光計画に,提案アルゴリズムを適用した. アルゴリズムの計算には本研究で定義・収集したPoIと経路の情報を用いた. その結果,20[s]という現実的に運用可能な短時間で,高い多様性を持つ自然な経路が生成された. また,これらの解は十分な精度を持っており,提案アルゴリズムを意思決定支援に活用できることがわかった.