腱振動刺激と視覚刺激による運動錯覚が肘関節角度の知覚に与える影響

萩森大貴 (1811219))


現実の身体より大きな運動が可能な身体拡張 (運動の身体拡張)は,脳卒中患者の運動機能のリハビリ促進や,仮想環境での歩行における限られた実際のスペースより大きな仮想空間を知覚させるRedirected walkingへの応用など,より多様な応用や現実感の高いVRが実現できる.しかし,拡張された身体の運動が現実の身体の運動からかけ離れていくほど,拡張された身体の運動に伴うと予想される様々な感覚が,現実の身体の運動による体性感覚だけでは一致しなくなり,身体拡張に違和感が生じる.そこで我々は,拡張された身体の運動が現実の身体の運動からかけ離れていている場合の運動の身体拡張を実現するため,現実の身体の運動による体性感覚だけでは不足する感覚を,運動しているように感じる錯覚 (運動錯覚)で補填することを提案する.1つ目の実験より,腱振動刺激があるとき,肘角度を実際より大きく知覚することが示唆された.2つ目の実験より,視覚刺激による運動錯覚のみでは知覚角度の増加は約12度であったが,視覚刺激と腱振動刺激の複合刺激による運動錯覚は,知覚角度を約20度大きくした.3つ目の実験より,より大きく拡張された肘関節運動を視覚刺激として与えられるとき,運動錯覚を明瞭に感じる値での振動刺激に,知覚角度の増加が最も表れやすく強い傾向となった.その差は,屈曲運動の場合約17度,伸展運動の場合約$-$12度であった.以上3つの実験より,腱振動刺激と視覚刺激による運動錯覚が,屈曲・伸展運動中の肘関節角度を変化させることが示唆された.