視界に制限のある自律移動ロボット群によるグラフ探索

長濵 将太


本論文では,自律移動ロボット群によるグラフ探索アルゴリズムについて検討する. ロボットは視界に制限があり,定数距離の範囲内のノードを観測することができる. また,ロボットはライトを持ち,このライトは定数個の色の集合から選ばれた1色を発することができる. 本論文では,永続探索と停止探索の2種類の探索問題を考える. 永続探索の目的は,全てのロボットが全てのノードを無限回訪問することである. 停止探索の目的は,各ノードを少なくとも1体のロボットが訪問したうえで全てのロボットが移動やライトの色の変更を終えることである. 探索対象のグラフとして,リングと有限グリッドの2種類を考える.

リング探索については,観測可能な距離が2以上の定数かつライトの色数が2以上の定数という条件を扱う. この条件のもと,永続探索の達成に2体のロボットが必要十分であること,停止探索の達成に3体のロボットが必要十分であることを証明する. これらの結果は先行研究と比較して,観測可能な距離を大きくすることで探索に必要なロボット数を減らせることを示している. また,ライト2色かつロボット2体の場合について,提案する永続探索アルゴリズムが万能であること,つまり,そのアルゴリズムが可解な初期状況のどれからでも永続探索を達成することを示す. 一方,停止探索については,ライト2色かつロボット3体の場合に万能なアルゴリズムが存在しないことを示す.

有限グリッド探索については,様々な条件のもと停止探索アルゴリズムを提案する. また,永続探索や停止探索に必要なロボット数の下界を示す. 本研究は,視界に制限のあるロボットによる有限グリッド探索を扱う最初の研究である.