人間の存在する環境で作業するロボットには,インタラクションや安全を目的として,常に周囲の人間の行動や物体の動作を観測することが求められている. センサの設置には,部屋など環境に配置する方法と,ロボット表面に配置する方法が考えられる.前者の方法では,ロボットとカメラの間に人間や家具が入り込んだ場合に観測できなくことから,その観点では後者の方法がより途切れのない観測を提供できる可能性がある. 一方で,ロボットアームなどの作業中に形状が大きく変化するロボットでは,姿勢に応じてセンサの観測範囲が変化する.センサとしてカメラを用いた場合では画像の向きも変化することからより煩雑な処理が必要となる場合がある.
本研究では,ロボットの周囲を観測できる全天球ビジョンシステムを提案する.ロボットアームの表面に取り付けた魚眼カメラの画像を統合し,全周の観測を実現する.また,必要な向きの画像を透視投影画像に変換し出力することで,既存の人間の検知の手法を活用することが出来ると考えられる. このビジョンシステムを使ったコンビニエンスストア環境を模した実験では,様々なロボットアームの姿勢で人間の動作をより途切れなく検知することが出来た.