心疾患,糖尿病,がん,慢性閉塞性肺疾患などの生活習慣病は, 死亡数割合では約6割を占めている. 厚生労働省では2000年から生活習慣病の改善などに関する目標を盛り込んだ「健康日本21」を開始し, 健康増進を図るための国民運動を進めている. また,生活習慣を見直すためにライフログに基づいてストレスや鬱との関係を調査する研究が広がっている. ライフログには行動情報と場所情報が必要であり, 特に場所情報は行動情報を推定するためにも用いられるため重要なコンテキストである. 位置測定は屋外であればGlobal Positioning System(以下,GPS)により容易に取得可能であるが, 生活習慣病予備軍と呼ばれる現代のオフィスワーカーは屋内での仕事が多い. よって,ライフログにおける場所情報は主に屋内の場所情報が求められる.
そこで本研究では,場所情報を取得するために低消費電力で部屋レベルの位置を認識するシステムとして, 環境発電素子をセンサとして用いたバッテリーレス場所認識システムを提案する. 特に環境発電素子の中でも太陽電池に着目しており, 太陽電池は受光量や受光波長,光源の角度などの条件によって発電量が変化し, 太陽電池の材料によってその特性に違いがある. したがって,逆に太陽電池の発電量の違いから周辺環境の条件を特定し, 条件に紐づけられた場所の推定が可能となる. また,太陽電池には複数の素材があるため, 特性の異なる太陽電池を組み合わせれば高い精度での場所認識が可能となる. さらに,太陽電池が発電した電力を用いてシステムを駆動させることでシステムのバッテリーレス化も行う. 本システムは,発電した電力を用いてシステムを駆動させて発電した電力を測定する必要があるが, 発電した電力は消費するため正確な発電量を測定することができない. よって,発電量を直接計測するのではなく, メモリの書き込みに必要な電力を貯めてタイムスタンプを書き込む間動作を行う. この動作を繰り返すことで, 単位時間あたりのタイムスタンプの書き込み回数から単位時間あたりの発電量を間接的に計測する. また,測定したデータはスマートフォンを用いて回収し,サーバへ転送される. その後,事前に作成したモデルを用いてサーバ内で場所を推定する. 場所を推定した結果はFirebaseに保存され, スマートフォンアプリケーションはFirebaseから推定結果を取得して表示する. このとき,推定結果が間違っていた場合,手動で修正することが可能である.
本発表では,まず,提案システムの概要およびライフログにおける場所情報を取得するまでのフローについて報告する. 次に,本システムの要であるデータ収集用デバイスについて報告する. 最後に,データ収集用デバイスを用いた評価実験および場所認識実験について報告する.