視覚的なノイズ減衰と注意誘導による集中力向上

古志将樹


作業に集中したい場合に耳栓をしたり音楽を聴いたりすることがある.これは, 周辺環境の聴覚ノイズを遮断することで集中力を向上させ,作業効率の向上を期待 しているためである.この聴覚的ノイズという概念を視覚に拡張して考えると,例 えば,作業と無関係な人や物が作業者の視野に入ることで作業効率が低下する可能 性が考えられる.本研究では,このような作業者の視線を引きつける作業と無関係 な人や物を視覚的ノイズとみなし,これに対して,2 つの手法を用いて集中力を向 上させるシステムの開発を目的としている.1 つ目の手法では,非作業領域に対し て,視覚的エフェクトを施すことで,集中力の低下を防ぐ.具体的には,非作業領 域にグレースケール化とぼかし処理を施すことで,視覚的ノイズを軽減する手法で ある.2 つ目の手法では,作業領域に対して,視覚的エフェクトを施すことで,集 中力を向上させる.具体的には,作業領域が徐々に拡大するエフェクトを施すこ とで,作業領域へと視線誘導を行う.提案手法は,集中力を向上させる一方で,周 辺視野の視覚情報をある程度維持し周辺環境の変化に作業者が気づける手法であ り,周辺環境の突発的な状況に対処することが可能である.作業者にHMD (Head Mounted Display) を装着させ,複数の実験を行った結果,非作業領域にグレース ケール化とぼかし処理を施した環境と魚眼エフェクトを施した環境で計算タスクの 作業効率の向上を確認した.