SVMの2値分類境界を用いた細胞主要機能分子の酵素選択
高阪 翔
細胞機能を人為的に操作できれば、医療分野での効果的な応用が期待できる。主な細胞操作の1つは薬物による分子阻害である。整体分子を阻害する様々な種類の化合物が既に存在している。ほとんどの化合物は複数の分子に作用し、各分子への阻害レベルはIC50としてデータベース化されている。特定の細胞機能を増減または低減するには、関連分子を特異的に阻害する化合物を開発する必要がある。本研究では、既知の酵素阻害剤に対する細胞の応答のデータセットから、その応答をより強調する酵素阻害パターンの推定を目的とする。具体的には、神経細胞の軸索がより伸長する酵素阻害パターンを推定する。本研究の問題は、多くのリン酸化酵素は同定されているが、軸索伸長に関わるリン酸化酵素、およびそれらの相互作用が不明である点である。また、既知の阻害剤添加時の軸索長は複数回の観測の平均を用いるが細胞個性の揺らぎが大きい。このことから、軸索長という目的変数が定量化されていながら、阻害度を説明変数とする回帰が困難となる。そこで本研究では、阻害剤に対する効果が軸索の伸長・退縮の2クラスに分けられることに着目した。2クラスのデータセットをガウシアンカーネルによるサポートベクターマシンで学習させ、データの背後にある未知の関数系をカーネル空間の識別関数で近似し利用した。また、軸索伸長に寄与する酵素の絞り込みを行った。人工的にランダムに作成した酵素ネットワークを用いて検証した結果、提案手法が一定の性能を見せることが確認された。