人は上肢の姿勢と力をコントロールすることで,食事,更衣,整容などを行うことが可能であり,日常生活において上肢動作は重要な役割を果たしている.そのため,上肢動作の解析や動作推定の研究が行われており,医療福祉,スポーツ,ロボティクスデバイスなど幅広い分野に応用されている.
上肢動作の計測方法として,慣性や画像などの非生体信号と表面筋電位や皮膚形状変化などの生体信号がある.非生体信号は,関節角度などを含む姿勢の取得は容易であり姿勢推定が可能であるが,外力が与えられた場合,外力を考慮した姿勢推定は困難である.一方で生体信号は,筋肉などの体組織の変化を計測しているため,外力が与えられた場合でも,外力を考慮した姿勢推定が可能である.
本研究では,上腕の皮膚形状変化に着目し,まず上腕の皮膚形状変化を計測可能な距離センサアレイの開発を行う.次に距離センサアレイを用いて上腕の皮膚形状変化を計測し,機械学習を用いて外力を考慮した上肢姿勢の推定を行う.予備実験では2種類の距離センサアレイを用いて,肘関節角度と把持した物体の質量の推定を行う.本実験では対象とした動作と関節トルクの推定を行う.計測値と推定値を比較し,提案手法の有効性を検証する.