観光行動理解のための分散表現を用いたユーザクラスタリング

久保 基


インバウンド観光を促進するためには,まず観光客の行動や滞在先を分析し,その傾向および要因を 理解することが,必要不可欠であるといえる.

観光の行動解析には,観光の行動系列から訪問地の分散表現を獲得し,観光行動系列をベクトル化する手法がある.
そうすることで観光行動系列間の距離を計算でき,似た観光行動を解析することができる.

また,観光客の行動は時系列データとしても扱うことができる.
時系列モデルを用いた観光の行動を予測する研究があり,時系列モデルは観光の行動予測においても有用であることが示されている.
しかし,この研究では現在から未来の訪問地を予測するために,過去の訪問地系列から次の訪問地を学習しているが 未来の訪問地を考慮することはしておらず,
この点については検討の余地があると考えられる.

そこで本研究では,双方向時系列モデルを用いて観光の行動予測を行い,モデルから得られた内部表現を観光における訪問地の分散表現として獲得する.
得られた分散表現から観光の行動をベクトル化し,そのベクトルをクラスタリングすることによって観光客の行動パターンを解析する.
従来の分散表現と,一方向での分散表現,及び提案手法の分散表現からクラスタリングを行い,いくつかの観光客の行動パターンを抽出した.
得られた行動パターンの傾向を考察すると,単方向の時系列を考慮した分散表現よりも双方向の時系列を考慮した分散表現の表現精度が向上していることがわかり,
提案手法による双方向の時系列を考慮した分散表現に基づくクラスタリングの有効性が検証できた.