盛り上がり雰囲気を提示するTV雑談エージェントによるユーザの感情増幅

木俣大樹


本研究では対話ロボットのようなエージェントに対するユーザの利用意欲向上を目的として,TV番組の盛り上がり雰囲気を提示するエージェントを提案する. SNSのコメント数を解析することで盛り上がりの強度を判定するモデルを作成し,得られた盛り上がりの強さによりエージェントの発話間隔,韻律情報のパラメータを決定するシステムを実装した.このシステムを用いたエージェントの有効性を検証するために防音室の中でエージェントとTV番組を視聴してもらい,主観的・客観的にエージェントの印象および感情の評価を行う実験を行なった.被験者は「スポーツを楽しく観戦できる」20代の男女24名を対象とし,比較条件としてエージェントなし,発話間隔および韻律情報パラメータ固定のエージェント4台,盛り上がり雰囲気提示エージェント4台の3条件で実験を行なった.その結果,被験者の主観評価で盛り上がり雰囲気提示エージェントは被験者に盛り上がりの印象を与えること,感情評価であるアフェクトグリッドの活性軸及び活性度の客観指標であるスキンコンダクタンスがそれぞれ優位に高くなることを確認できた.また,他条件と比べて盛り上がり雰囲気提示エージェントが最も多く「もう一度使用したい」という評価を得ることができた.この結果から盛り上がり雰囲気提示エージェントは主観・客観指標においてユーザの活性度を増幅し,利用意欲を高める上で有効であることが示された.