ロボットにおいて、暗闇での把持や、透明物体の把持するにはまだ、問題がある。解決策として、音波を用いての対象平面の方位角方向推定手法を提案する。Photometric Stereoに代表される陰影解析を参考にして、波の強弱に着目することで、これまでには無い手法で平面の方位角の推定を行うことを目的とする。
本論文では、二通りの手法を提案する。1つ目は光学における物体面での波の反射モデルと音響学における音の周波数における反射特性の変化の2点に着目することで、モデルを作成し、モデルベースで平面の方位角方向を推定する。 2つ目は実際に対象平面、スピーカ、マイクを用いて実験を行って取得したデータに対して、周波数領域での特徴について、サポートベクター回帰を用いて、モデルを作成することで、モデルフリー学習ベースで平面の方位角を推定する手法である。
モデルベースによる結果、平面の方位角推定はできなかった。原因は2つ考えられ、1つ目は仮定として、考えていた音響分野のモデルが壁面などのある程度の大きさを持った物体でなければならない点で、今回対象とした平面には合わなかった点が考えられる。2つ目は光学における反射モデルを考える際に、ある1点での反射のモデルを立てたが、音声分離がうまくいかず、欲しい点の音の情報を取得することができなかった点が考えられる。
モデルフリー学習ベースによる結果、-45 $\sim$ 45の範囲で、誤差5[deg]以内で方位角を推定できた。また、この手法は無響室だけでなく、実環境でも認識可能であった。
さらに、モデルフリー学習ベースの手法に関して、まず、必要な実験機器等の実験条件を検証するために、次の1 ~ 3の検証を行った。1.使用した音の種類(TSP信号, トーン音), 2.使用した周波数の範囲, 3.使用したスピーカ(平面波, 球面波)。次に、対象物体の条件を検証するために、次の4 ~ 6の検証を行った。4. 対象面の材質(ガラス, ダンボール), 5.対象面の大きさ(大, 中, 小), 6.対象面の数(1面, 2面)。結果、1, 3において実験条件の有効性を確認でき、4 ~ 6に関しても方位角の推定を行うことができることを確認した。
現状の手法ではマイクと対象物体の距離、対象物体の材質, 実験環境の全ての条件に対して、毎回モデルを作成し直す必要がある。モデルベースでの手法と組み合わせることによって、様々な環境や対象物体に対して方位角を推定できる手法の開発を目指す。