非共振コイルアレイおよび受電側補償回路を用いた移動体向けワイヤレス給電システムの提案と評価

大橋 達矢(1811048)


昨今,電源ケーブルを用いずに非接触で電力を供給するワイヤレス給電技術が注目を浴び,様々な電子機器に利用されている. 今までのワイヤレス給電は静止状態の給電に限定されていたが,近年では電気自動車や無人搬送車(AGV)などといった移動体への給電の期待が高まり,走行中ワイヤレス給電への拡張が試みられている. 従来法として複数の送電コイルを配置し、送電側と受電側でインピーダンス補償をする方法があり、高い伝送効率が見込めるほか漏洩電磁界抑制効果というメリットはあるが, コイルが増加するほどスイッチング・センサーによる正確なコイルのON・OFFの切り替えが必要になりシステム制御の複雑化が生じる. 一方、送電側にコンデンサを挿入せずに受電側のみで送電側も含めた回路全体のインピーダンス補償をする受電側補償回路が提案されている. 受電側のみに補償回路を組み込むことで送電側の回路がシンプルにすることが可能であるほか,受電部と非結合時には送電側の電流が抑えられおり,いわばコイルをOFF状態にすることが可能である.  

そこで,本研究では移動体向けワイヤレス給電の利便性向上を狙いとして,従来の1対1型の受電側補償回路をN対1型に拡張し、センサーを用いずにコイルの切り替えが可能な移動体向けワイヤレス給電システムを提案する. 移動体向けワイヤレス給電において1対1型の給電方式では受電コイルが移動していくときに複数設置された送電コイルの境目において伝送効率が低下することが懸念される. そこで受電コイルを複数の送電コイルと同時に結合させることで送電コイルの境目における伝送効率の低下の抑制を図る. 送電コイルを一列または格子状に配置し,そのうちの数個のコイルを受電コイルと同時に結合することで,送電エリア内であれば高い伝送効率を維持することが可能になる. また,本システムでは送受電コイルが結合時のみ送電コイルに電流が流れるため,漏洩電磁界の低減だけでなく,センサーを使用することなく送電コイルを自動的に切り替えることが可能となる. 計算機シミュレーションと実機実験から提案手法の有効性を確認した.