QoL向上のためのスマートデバイスによる
家事ストレス記録システムの構築と評価

大西 晃正


 家事を行うことは人間が生活をするうえで,必要不可欠である. 洗濯や掃除など家事は数多くあり,日々家事を行うことが人々の負担になっていることが考えられる. 現在,簡易的なストレスチェッカーやアンケートによるストレス評価など, 日常的なストレスを測定することはできるものの,生活中のストレスの原因となっている 行動を特定することは難しい. そこで,家事のストレスを把握することを考える. 家事のストレスを把握することが可能になれば,生活中の負担となっている行動を改善すること によって,自身の生活の質( QoL:Quality of Life )を向上させることができるようになる.

 本研究では,居住者の家事における負担の指標として, 家事のストレスを記録するシステムを構築し,家事の負担について検証し, 家事を行うことの負担を軽減・改善することを支援することで 居住者のQoLを向上させることを目指している. 家事におけるストレスを記録することで, 居住者はどの家事をすることが精神的・身体的に負担がかかっているかを把握でき, 日常生活において改善すべき要素を考えるための気付きを得ることが可能になると考えている. 例えば,仕事帰りで翌日朝早く起きて出かけなければならないとき, 負担の少ない家事が把握できていれば,負担の少ない家事のみを行うことで, 翌日のために備えながら家事を消化することが可能になる. また,夫婦間の家事の負担度を可視化・共有することができれば, 近年問題になっている家事分担の不公平感を解消するためのきっかけになることが考えられる.

 本発表では,家事のストレスを記録するためのシステムの構築とシステムを用いて 家事を行うことによる居住者のストレス状態の変化を検証するための 実験方法とその結果について発表する.システムは,ウェアラブルセンサと スマートデバイスを用いて,ストレス推定,行動ラベルの記録,家事毎のストレス出力を行う. 実験内容は,被験者が制限時間内に複数の家事(洗濯,掃除,料理,皿洗い)を行ってるときに, 提案システムを用いて記録を行うものである.制限時間や対象家事を変更しながら, 被験者1人あたり3回の実験を行った. 実験を行った結果,被験者毎にストレスや負担が大きい家事に違いがあることが判明した. また,時間やタスク量を調整することにより家事のストレスや主観評価による 精神的・身体的負荷が変化することが確認された. 実験結果より得られた知見から, 家事を行うことにおけるストレスや負担を軽減するための生活支援方法として, 身体への負担と家事の優先度を考慮した家事遂行案の提案を行うことや 家電推薦・家事代行サービスを有効に活用することを検討した.