遅延自己鏡映像フィードバックの印象操作による行動変容

大久保 至道


本研究では,客体的自覚理論に基づき,自己鏡映像フィードバックの印象をどのように変化させると,被験者は適切な範囲で自己認知をし,理想自己に近づける行動をとるのかを調査する.

本発表では,被験者の理想的な行動を促す手法として遅延と印象操作という2つの機能を持つ視覚的フィードバックを提案する.本フィードバックでは,遅延機能により他者と会話中の自身の動作や表情が確認可能になり,さらに印象操作機能によって自己認知を変化させることで,リアルタイムに自身の表情や動作の改善を促せるのではないかと考えた.本フィードバックの効果検証は面接試験タスクによって行なった.結果より,面接試験中の被験者に,自分自身の調節によってコントラスト・明るさ・カメラアングルのパラメータを変化させ,理想自己へ近づけた印象の自己鏡映像を提示することで,自己評価の上昇の促進が確認された.面接中の被験者を撮影した録画ビデオから被験者の表情・動作の表出頻度を分析した結果では,自己鏡映像の印象を理想とは反対に近づけた条件下で,表情・動作の改善行動が促されたこと示唆された.さらに,印象操作による被面接者の行動変容が第三者の評価に及ぼす影響を録画ビデオを用いて評価した結果,理想自己の種類によっては変容した行動が伝わることが示唆された.また,自己関与による影響を排除し,自己鏡映像の印象効果のみによる被験者への影響を調査した実験では,被験者による印象操作への関与がない場合でも印象操作パラメータの自由度を向上させることで,被験者に対して意図した印象を喚起可能なことが示唆された.