健常高齢者における認知機能低下と安静状態 fMRI の固 有モードの活動変化の関係

池田圭介(1811012)


高齢化が進む社会の中で,健康寿命の延伸や介護負担の軽減が社会課題となっている.しかし,多くの高齢者が加齢により運動機能や認知機能が老い衰えた状態である「フレイル」を経て要介護状態になることが知られている.この問題を解決するためには,正常な加齢による認知機能低下のメカニズムの解明や機能低下の定量的評価指標が必要になる.従来の高齢者の脳機能研究では,脳の構造と機能を別々に取り扱うものが主流であったが,近年,脳の神経線維のネットワークを仮定した上で機能信号を取り扱う,固有モード解析と呼ばれる手法が使われ始めている.固有モード解析の利点としては,fMRIから得られる機能信号を空間的・時間的に周波数が異なる固有モード単位に分解できるということや,モードごとのパワーの偏りを用いて特徴量削減を行うことができることなどがあげられる.本研究では,固有モード解析から得られる脳活動の活動伝搬(energy)が加齢とともに減少し,高齢者の認知機能低下と関連しているのではないかと仮説を立て,それを検証するために2つの解析を行った.まず,幅広い年齢層の安静時fMRIデータを用いて年齢とともにenergyが低下することを示した.次に,高齢者の安静時fMRIデータから算出したenergyと認知機能検査の相関を調べることで,特定の認知機能は特定の固有モードと関係していることを示唆する結果が得られた