グラフマッチングを用いたアニメ線画間でのストロークの対応推定

池澤 隼人


 現在,アニメは日本国内のみならず世界的に人気のあるメディアとなりつつある. しかし,近年ではアニメーターの人材不足が深刻になってきており,生産性の向上が急務となっている. このような状況を受けてか,昨今では,アニメ制作工程の自動化・効率化を目的とした研究が盛んに行われている. 制作工程の一つである中割り作業の自動化・効率化についても,与えられたペンストロークの対応関係をもとに 線画補間を行う機能がアニメ制作用のソフトウェアに組み込まれている.これらのソフトウェアでは,各線画に おけるストロークの入力順序を対応関係の指定に利用している都合,線画間でストロークの入力順序を統一する必要がある. しかし,現在のアニメ制作は複数のアニメーターが携わることが一般的であり,描き順の統一は現実的ではない.

 そこで,本稿では,入力されたベクタ形式の線画に含まれるストロークの情報を基にグラフを作成することで, 2枚の入力線画間でのストロークの対応関係を推定する問題を,それぞれの線画から作成されたグラフ間の対 応関係を推定するグラフマッチング問題に帰着させて解く方法を提案した.また,実際のアニメに用いられた線画 からグラフを作成し,時間的に連続した線画どうしのストローク対応関係の推定を試みた結果,単純なストローク 構造を持つ線画においては尤もらしい推定結果が得られた.併せて,本手法で得られた対応関係をもとに,既存の ソフトウェアを用いて自動中割りを実行したところ,時間変化の少ないシーンにおいては適当な中割り線画が得られた.