長期間の学習によって脳内で獲得される状態表現と,その更新のダイナミクスに関する研究

穴井達 (1811008)


ヒトは感覚入力と過去の経験を統合して状況の判断を行うことで、膨大な感覚入力を受けながらも適切に外部環境を知覚することができる。近年の神経科学研究では、外部刺激をどのように知覚するかを決定する“状態表現”が線条体と呼ばれる脳領域に表現 されることがわかってきている。しかしながら、変わりゆく環境の中で適切な状態表現を脳内でどのように獲得・保持・更新されているのかは明らかでない。本研究では、状態表現が脳内で獲得される過程を調べるために、図形と報酬の対応関係を学習する3週間の学習課題を実施中の脳活動をfMRIで計測し、学習過程における状態表現の変化を調べた。さらに状態表現の更新のメカニズムを調べるために、長期学習課題後に図形と報酬の新しい対応関係を再学習させる課題を実施し、再学習前後の脳活動を調べた。その結果、長期学習課題の学習過程に応じて線条体内に状態表現が獲得されることがわかった。また、新しい対応関係を再学習する際の脳活動を調査した結果、再学習時にも線条体が賦活し、他の報酬や記憶に関わる領域と情報伝達をしていることが示唆された。