キーワード：対話システム, 説得対話, 感情表現, 音声対話ロボット
説得対話において，自分の意見を相手に受諾させる手段として感情表現が効果的であることが知られている．そのため，感情表現を用いた説得対話システムを構築する研究が行われてきたが，システムによる説得対話において意図した感情を充分に伝達しつつ自然な応答を行うことが困難であった．本研究では，感情表現を用いて効果的な説得を行う音声対話ロボットの実現を目指して，文脈に沿った応答を行いつつ多様な感情表現をロボットによって可能にするため，感情表現を含む説得応答文コーパスを作成した． 具体的には，クラウドソーシングを用いて，既存の説得対話コーパスを基に1つの文脈で異なる感情ラベルを持つ応答文を収集し，追加した．これを用いて，様々な文脈に対してシステムの感情状態に応じて応答を選択できるような対話ロボットを構築する．さらに，収集したテキストの感情を表現する音声の収録と，対話ロボットによって感情を表出するジェスチャーを作成して，音声説得対話に用いた．収集したテキストと音声に対し感情伝達度合いの主観評価を行い，収集コーパスがシステムの感情を伝えるために十分な能力を有していることを確認した．作成したコーパスを用いて，BERTモデルによる文のベクトル表現に基づいた応答選択機構を構築した．また，それらを用いて，感情を表現しながら説得を行う音声対話ロボットを作成した．音声対話ロボットによる対話実験では，説得対話においてロボットが複数のモダリティによって感情表現を行う有効性が示唆された．