日本では、平成32年から実施される新学習指導要領(ICT教育)に向け、教科書がデジタル化していく流れにある。デジタル教科書は、紙媒体では付加できなかった、動的コンテンツ(動画や音声)や関連リンクの表示を可能にし、教科書の学習効果や理解度の向上に繋がると期待されている。しかし、学習効果や理解度を高めていくためには、媒体側からの「一方的な情報提供」ではなく、媒体が学習者の認知状態を理解し「媒体と学習者の双方からインタラクション(情報共有)」を行うことが重要である。そこで我々は学習者の認知状態の把握方法として、本研究では眼球運動情報に着目した。眼球運動情報は、認知状態の推定が可能であり、また学習者が「どの」認知状態において、教科書の「どこ」を読んでいるかを把握できるためである。
本研究では、眼球運動情報に基づいて、HyperMind(インタラクションを行うデジタル教科書)を作成するツール:HyperMind Builder を提案、実装した。先行研究では、HyperMindの作成には、プログラミングスキルを必要としており、誰もが独自のHyperMindを作成することが出来なかった。今後、HyperMindによって様々な学習領域を網羅していくためには、学習者の特性や学習効果に詳しい専門家もプログラマの手を借りることなく、自らHyperMindを作成できるようにすることが重要だと考える。本発表では、実装したGUIツール:HyperMind Builder についての詳細を紹介し、ユーザビリティ調査の結果について報告する。本提案をきっかけに教育分野の新たな教育研究のプラットフォームになることを期待する。