RoFによって構成したモバイルフロントホールにおけるプリディストーション型相互変調歪抑圧法

Yoshikawa Hiroaki (1751123)


  第4世代及び第5世代無線通信システムではベースバンド信号処理部(BBU: Baseband Unit)を一箇所に集め,無線の送受信機能部(RRH: Remote Radio Head)だけをアンテナ近くに設置し,光ファイバ回線で接続するC-RAN (Centralized-Radio Access Network)で構成される.BBUとRRHを結ぶモバイルフロントホール(MFH: Mobile Fronthaul)にはCPRI(Common Public Radio Interface)インターフェースが用いられ,量子化ビット数やオーバーサンプリングにより無線区間の帯域幅に対して10倍以上の光伝送レートを必要とする.RRHに一部の信号処理機能を分割することでMFHの伝送速度及び伝送遅延時間の削減が検討されているが, RRH側の装置構成が複雑となる.

  そこで, 無線信号の帯域と同等の帯域幅を伝送することができるアナログRoF(Radio over Fiber)の活用が適するが,アナログRoFは相互変調歪による特性劣化が課題となる. 相互変調歪は, E/O変換特性の非線形性により, 複数の異なる周波数の信号を入力したときに入力信号とその高調波成分との間で発生する和と差の周波数成分であり,入力信号の周波数の近傍に生じるため信号品質が劣化する. これまでに数多くの歪抑圧技術が提案されているが, 制御局側のベースバンド処理部において歪抑圧を行うプリディストーション型の歪抑圧法に着目した.  プリディストーション方は大別すると, E/O変換デバイスを用いて歪み信号を求め, それを入力信号から減算する方法とE/O変換特性の逆特性であるアークサイン特性を用いて非線形成分を打ち消すような特性を入力信号に与える方法の2つである. 歪み減算法ではこれまでのところ, 歪み信号を求めるためにRoF伝送用とは別のE/O変換デバイス用いた手法が提案されていた.

  本研究では, プリディストーション型の信号歪み減算による抑圧法として, E/O変換のための実デバイスを用いずに, E/O変換特性の多項式展開を利用して計算により非線形歪みを含む信号を算出し, これを入力信号から減算する方法を提案する. これによりデバイスの数を削減し, 簡素な構成によりアナログRoFを用いた設備構成が可能となる. またE/O変換器の逆特性を利用する抑圧法については, これまでアークサイン特性を与えた後のE/O変換特性出力の線形成分の傾きについては固定されていたが, 任意に変更可能であることを述べる. これを利用してRoF出力後のゲインを提案方式と等しくし, これまで評価されていなかった複数のLTE信号を一括して伝送した際のシミュレーション結果を報告する.