モバイル・エッジ連携型自動避難誘導における迅速性・安全性・避難所容量を考慮した避難所選択方式

松田 大樹 (1751109)


大規模災害発生直後の迅速かつ安全な避難実現のためにモバイル・エッジ連携型自動避難誘導方式が提案されている. 既存方式は,避難者の持つモバイル端末が,事前入手可能な地理的リスク情報と避難行動中に自動的に収集できる道路網の被災状況を組み合わせることで,避難者に対して迅速性と安全性を考慮した避難経路を提示できる. 一方で,避難所選択に関しては,最寄りの避難所の選択を前提としており,避難経路の安全性や避難所容量については検討されていない. そこで本研究では,避難行動の迅速性・安全性と避難所容量を考慮した避難所選択問題を整数線形計画問題(Integer Linear Programming: ILP)として確立する. 災害発生直後の避難者の位置は事前に予測することが困難である一方,避難所と経路の選択は災害発生直後,個々の避難者が速やかに行える必要がある. そこで提案方式では,エッジサーバが災害発生前に対象地域の道路網における各交差点から各避難所に対する迅速かつ安全な経路候補を計算する. モバイル端末は,災害発生前に対象領域の地図,避難所の位置・容量,エッジサーバが計算した避難経路候補を取得しておき,災害発生直後,GPSにより自身の現在位置を把握するとともに,残存する通信インフラストラクチャや遅延耐性ネットワーク(Delay Tolerant Network: DTN)を用いることで,他の避難者の位置を取得する. モバイル端末はこれらの情報を基に,避難所選択問題を解くことで適切な避難所と避難経路を取得する. 数値実験より,名古屋市の荒子学区において,提案方式は既存方式と比較して平均経路長の増加を5.3%に抑えつつ,平均経路信頼性を15.2%改善できることを示す. さらに,居住者の地理的分布と避難所の配置・容量とのミスマッチが生じている学区では,提案方式による避難行動の改善効果が得られにくい場合があることを示す.