そこで本研究では,ユーザの視覚機能や認知機能をサポートし視界内の対象物のコントラストを調節する技術の確立と検証を行うために,ユーザの視界に直接人工的なコントラストを与えるようなシステムの開発を行う.透過型液晶ディスプレイ及び凸レンズ群を用いた光学系を作成し,対象となる領域以外の明るさを抑制する事により対象となる領域を相対的に明るくする.これにより,ユーザが本システム越しに外界を観察する際に特定の領域に人工的なコントラストを与えることが実現できる.
本研究では試作システムを実装し,視野角や視界の鮮明さ等のシステム挙動について検証した.さらに,本研究ではユーザに物体の発見を促すために必要なコントラストの強さを予備実験にて実証し,その結果をもとに透過型液晶ディスプレイの適切な画素値を導出した.
以上の試作システムの有効性を検証するために,ユーザに視界内の物体をなるべく早く発見するタスクを課す実験を行った.その結果,システムが特定領域を強調している場合に,物体の発見時間がおよそ27%短縮され,統計的にも有意であることを確認した.